自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が、2024年4月1日から960時間以下に制限され始めた。いわゆる物流の「2024年問題」への対応が、必要になる。
J-CASTニュースBiz編集部は、規制が始まる前の今年2月、物流業界で働く人物に取材した。今回再取材で、規制開始から1週間の状況を聞いた。
走行可能な時間の短縮で「輸送速度の高速化」
全国規模の物流会社の配車部門に勤務するAさん。この会社には自社のトラックがある一方、個人事業主のドライバーが運転するトラックに業務委託することも一般的だという。Aさんは個人事業主のドライバーに仕事を依頼する業務が専門で、ドライバーへの報酬額はその都度、個人事業主と交渉の上で決まると明かす。
前回の取材でAさんは、4月1日からの規制適用で、トラックドライバーの1日当たりの労働時間の上限が、残業を入れても原則13時間以内となる点に注目した。変更前では1日でたどり着いていた距離(Aさんいわく、大阪~青森間など)の配送便において、到着前に制限時間になり、1日では業務完了しないという問題が頻発すると予想。その解決策がどうなるかが争点と考えていた。
そして、今回。編集部の取材に対してAさんは、解決策として「輸送速度の高速化」が取られ始めていると明かす。残業時間が規制されて走行可能な時間が短くなったため、これまでは国道などの「下道」を使っていた箇所でも、高速道路を利用するようになった。労働時間が短くなっても1日の走行距離を以前のレベルに保つためだ。その結果、
「『輸送費の高騰』を招いています。とにかく高速道路の料金が高く、その価格を転化させなければなりません」
と話した。なお走行距離は変わらないので、ガソリン代は変化なしだという。
「手配できるトラックの絶対数が少なくなっている」
輸送費の高騰の理由は他にもあるという。残業規制が始まったことにより、運送会社同士のトラックの囲い込みが強まり、「今までよりも手配できるトラックの絶対数が少なくなっている」。その結果、需要と供給バランスによって発注額が上振れしているのだ。
他にも、残業時間は規制前までよりも確実に減少するので、「ドライバーの給与水準を維持する」名目でも、やはり、発注額が高騰するとAさん。これらの要因で利幅がなくなり、どうにも難儀しているのだと明かす。
最後に、Aさんは今回のドライバーの労働時間の規制が始まったことにより発生する副次的効果についても明かした。
「まだデータが集まっていないので分かりませんが、高速道路の利用が増えているので、何だかんだで物流業界から高速道路に入る収益が増えているのではないでしょうか」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)