「周囲に合わせなくていい。職場で一番になれるスキルを!」 劣等感に悩む若手がハッとした上司の一言(2)

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   上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?

   会社の中で実際に起きた困ったエピソード、感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業代表の前川孝雄さんが上司としてどうふるまうべきか――「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。

   今回のエピソードを踏まえ、前川さんは「チャンスとは、会社という組織に属しているからこそ訪れる、波のようなもの。そして、さまざまな波を乗りこなすことで成長できる」といいます――。

  • 劣等感に悩む若手がハッとした一言とは
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「恩返し」に向けて、社内コンテスト出場

   <「周囲に合わせなくていい。職場で一番になれるスキルを!」 劣等感に悩む若手がハッとした上司の一言(1)>の続きです。

   ようやく自分のスキルでお客様の役に立てることを実感したNさん。

   次の目標として挑んだのは、ベストナレッジアワードという社内コンテスト。これは、優れた功績を残したと認められる社員が、その内容を競い合うものです。

   開催第1回のこの年、参加者は全国から数千人。地方予選からトーナメント方式で優勝者を決めるものです。

   Nさんは、当初、入社3年目の自分が参加していいものか迷っていました。社内にとどまらず、業界内でも名をはせる著名エンジニアの先輩たちが競い合う、いわば「メジャーリーグ」。自分はやっと「アマチュア」を卒業したレベルだと感じていたからです。

   けれども、自分のような文系出身で何のスキルもなかった若手が、上司やチームの仲間に支えられて一つのことを成し遂げられたのです。

   恩返しの一つだと考え、取り組んできた仕事のプロセスと得たナレッジを発表しようと決意したのです。仕事の合間に、発表資料づくりとプレゼン準備に全力で取り組みました。

   関西の所属ブロック地方予選だけでも約100人がエントリー。それでもNさんは、見事に突破し、西日本代表に選ばれ、最終予選まで勝ち進みます。

   全国から最終に残ったのは7事例。キャリアも実績も、すべて自分よりはるかに上のすごいプロフェッショナルが手掛けたプロジェクトばかり。

   ところが、到底勝ち目はないと思ったものの、なんとNさんは見事優勝を果たしたのです。

   晴れのステージで自分の名が呼ばれた瞬間。Nさんは自分の耳を疑ったほどでした。「私でいいのか」との思いも。

   でも、自分一人で勝ち取ったのではなく、先輩や上司など周囲の助けがあったからこそ成し遂げられた仕事。この優勝で皆に恩返しができたようで、感動に打ち震えたのです。

   新人研修時代に、周囲から遅れをとっていたNさんに対して上司が言った

「自分が一番と言えるスキルを身に付けろ」

   という言葉。Nさんは、その言葉を現実のものにできたのです。

   これからは少々の難題が降りかかってきても、きっと乗り越えられるとの自信が持てるようにもなりました。

   日進月歩のITの世界。相変わらず担当分野では未知のことが次々と出てくるものの、不安になることはなくなったのです。

エンジニアからマーケターへ、「社内転職」を決意!

   入社4年目に入ったNさんは、これからの自分のキャリアについて考え始めました。

   新システム導入の成功。そして、コンテスト優勝で得た達成感を、新たにまた味わいたくなってきたのです。そのためには、次なる具体的な目標を自身に課すことが必要でした。

   Nさんの新たな目標――。それは、エンジニアとは違う道でキャリアを積むことでした。

   自分の原点に立ち戻って考えてみると、そもそも自分はエンジニアになりたかったわけではない――。難しいと思われがちなITというものを、やさしく伝えられる人になりたい。

   それが自分の根底にあると、再確認したのです。

   そこでNさんは、会社の中で職種の垣根を越えて「転職」ができる、社内公募制度への応募を決意します。

   ジョブ型の人事制度も浸透して、専門分野でのプロになることを目指す人が多いなか、職種を飛び越えての公募にはとても勇気がいりました。Nさんは、まず直属の上司に自分の進みたい道について相談し、公募への協力を仰ぎます。

   Nさんが目指したのは、マーケティング部。上司のサポートを受け書類選考を通過すると、次はマーケティング部門責任者との面談。

   Nさんは、これから自分が目指したいキャリアはマーケティングの仕事にあること。それは入社時から温めていた思いであるのだと、強く訴えました。

   選考に関わった幹部たちは、Nさんが志望と異なる配属にショックを受けつつも腐らず、気持ちを直ぐに切り替えたこと。スキル不足にも負けず努力を重ね、他にない専門性を身に付けながら、次々と成果を上げてきたことを評価してくれました。

   3か月間の社内転職活動が実り、Nさんは希望通りマーケティング部に迎え入れられたのです。

何より自分の社内ポジションを確立せよ!

   異動早々にNさんが任されたのは、企業ホームページのコンテンツを企画・制作する仕事。

   エンジニア時代とはまったく違う環境に、Nさんは戸惑いと不安を覚えます。エンジニア時代はお客様を担当するまでに半年。今回は着任からわずか2週間。そのギャップにも驚きます。

   異動先の上司からは「いかに未経験とはいえ、新人扱いはしないから」と衝撃の宣言も。エンジニアで働いていた頃は、先輩を真似たり相談もできたのに、周囲に自分と同じ仕事をしている人がおらず、それもできません。

   担当した企業ホームページのコンテンツ制作は、自分が失敗したら全社的に影響が出て迷惑がかかるプレッシャーが大きいもの。悪戦苦闘する日々が続きました。

   実は、ここにも上司の意図が。

   Nさんには根気強さがあるので、思い切って厳しい環境に放り込んでみようとの判断があったといいます。Nさんは、困難に遭っても必ず這い上がってくるはず。何を獲得して這い上がってくるかを見届けようと思ったといいます。

   親ライオンに崖から突き落とされるかのような、厳しい試練を与えられたNさん。しかし、上司の想像通り、七転八倒の苦心をしながらも最後にはコンテンツ制作をしっかりやり遂げ、クオリティ面でも期待に応えたのでした。

   Nさんが次に任されたのは、製品カタログの制作。全社的に活用されることもあって、要所要所で想定外の指摘が入り、締め切りがあるため緊迫したジャッジも迫られました。

   技術部門からはカタログに「製品をよく見せる」ことを求められ、一方、営業部門からは「製品を売りやすい」カタログが求められ...。

   部署によって重視するポイントが違うため、何が最良の選択なのか判断できなくなり、混乱の極みに。前門の虎・後門の狼のような事態ばかり。今度ばかりは出口を見出せず、大きなピンチです。

   すると、板挟み状態のNさんに、上司は一言アドバイスをくれたのです。

「今のNさんに必要なのは、目の前のカタログを仕上げることだけじゃない。まず社内の人たちと信頼関係を築くことだ。双方の意見を取り入れたことで、少々ちぐはぐな内容になっても構わない。様々な部署と渡り合い協働もできるようになるため、自分の社内でのポジションを確立することが先決だ」

   Nさんは、ハッと目が覚める思いでその言葉を噛み締めました――。

   <「周囲に合わせなくていい。職場で一番になれるスキルを!」 劣等感に悩む若手がハッとした上司の一言(3)>に続きます。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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