「周囲に合わせなくていい。職場で一番になれるスキルを!」 劣等感に悩む若手がハッとした上司の一言(1)

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   上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?

   会社の中で実際に起きた困ったエピソード、感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業代表の前川孝雄さんが上司としてどうふるまうべきか――「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。

   今回のエピソードを踏まえ、前川さんは「チャンスとは、会社という組織に属しているからこそ訪れる、波のようなもの。そして、さまざまな波を乗りこなすことで成長できる」といいます――。

  • 劣等感に悩む若手がハッとした一言とは
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部下育成はマーケティングの視点で

   働く人たちが多様化する現代。私は、部下育成にはマーケティングの視点がより大切になると考えています。

   会社経営では、顧客と市場の動向を見据えながら、自社の製品やサービスの独自ポジションを探し出し、他社と差別化を図ることが重要――。マーケティングの基本として、誰もが意識するところでしょう。

   こと人材育成においても、今や同様の視点が重視されるのです。

   これからは、従来のように部下全員に一律の階層別研修を受けさせ、画一的なジョブローテーションを経験させることで、同一スキルを持つジェネラリストを養成すればよい時代ではありません。

   部下一人ひとりの持ち味やキャリア希望に着目し、それぞれの育成と活躍支援に通じる役割を任せることで、組織の力を最大化する、ダイバーシティマネジメントが求められているのです。

   今回取り上げるのは、自身のキャリアに悩んでいた若手の女性社員。

   彼女が迷いながらも次々と新たなチャレンジに挑み成長を遂げる姿と、それをしっかりサポートした上司のエピソードです。

   グローバルに展開するIT企業に、エンジニアとして入社したNさん。

   大学では文系学部に所属していましたが、「手に職を付けたい」と、この道に飛び込みました。社会学を専攻するなかで、ITの進化が社会に及ぼす影響に関心を深めたからです。

   Nさんは、ITを世間にわかりやすく伝えられるようになりたいとキャリア展望を抱いていました。

   そのためにまず、自分自身が一定のITスキルを身に付けようと自学自習。将来、結婚や出産を経ても働き続けられるプロになろうと考えて、現在の会社に入社したのでした。

「自分が一番」と言えるものを身に付けなさい!

   Nさんが、入社後3か月の新人研修を経て配属になったのは、関西エリアの事業所でした。

   東京本社勤務を熱望していたので、大きなショックを受けました。関西で生まれ育ったNさんの憧れは、東京で働くこと。情報や人が集まり、グローバルにもキャリアが拓けると期待していたからです。

   しばらく落ち込んでいたものの、前向きなNさんは、いつか絶対に東京勤務を果たそうと目標に決め、気持ちを切り替えました。

   Nさんの配属は、関西エリア顧客企業のITサポート業務。システムを保守するエンジニアです。当初の半年間はOJTや資格取得のための勉強と研修の毎日。ここでNさんは、想定以上の苦戦を強いられます。

「3か月経っても、ほぼ何も習得できていない。同期は理系の人ばかりで、基礎が違う。周りはどんどん成長していくのに、私は置いて行かれるばかりだ...」

   文系出身のNさんは、求められる学習スピードに全くついていけなかったのです。

   焦ったNさんは、勇気を出して、自分が何も分かっていない現状を直属上司に打ち明けました。すると、上司からは意外なアドバイスが。

「周りに合わせることや、追いつくことばかり考えなくていい。うちのチームには、同じスキルを持った人はいらないんだ。自分が一番と言えるスキルを身に付けて、チームを支えてほしい!」

   他のメンバーと同じ力を身に付け、早く追いつかなくてはと思っていたNさんには、目からウロコでした。

   そこで、上司からのアドバイスを受ける中で、大手ソフトウェア企業認定資格の取得を目指すことに。当時、チーム内にその資格を持つエンジニアは希少だったので、「これだ!」と決めたのです。

   Nさんは、さっそく勉強を始めますが、全7科目への合格が必要。1科目につき1週間、計7週間のトレーニングをクリアしなければなりません。

   そのためには、早朝・夜間、週末もすべて費やして猛勉強。しかも、要所でのスクーリングは東京開催。ただ、その都度、東京に行けることを楽しみに通い通し、難関資格を半年の短期間で取得したのです。

   資格取得に成功し、一歩前進したNさん。この頃から、東京に行きたい一心だった心境から変化が表れてきます。

「関西で働き続けることは本意ではない。でも、何も貢献できずに東京に転勤するのも嫌だ。私に資格取得を勧めてくれた上司のためにも、きちんと実績を残していきたい...」

   Nさんは、そう考えるようになっていました。

私の役割って何?

   難関資格を取得したNさんは、翌年の春、ついに初めて主担当としてお客様企業を受け持つことになります。大きなプレッシャーと不安を感じながら、新たなチャレンジの日々がスタートします。

   お客様へは、営業担当を含む3人体制で訪問。

   いざ商談に入ると、お客様への提案で営業担当がNさんより優れていたり、本来はNさんが応答すべき部分でうまく解説できず、もう一人の担当者がカバーしてくれたりしたものでした。

   『自分の役割が果たせていないんじゃないか...』と感じることが多く、自信を失いかけたNさん。チームメンバーのフォローや励ましがありがたく、気遣いが身に沁みました。

   難関資格を短期間で取得したとはいえ、実践ではまだまだ通用しない...。そんな葛藤の最中、苦境を乗り越えるきっかけとなる出来事が起こります。

   新たな保守サービス・システムの導入が決まったのです。

   これまでの保守サービスは、お客様からシステム障害の連絡があってからサポートに動くもの。新システムでは、お客様に異常が生じたら自動的にこちらに通知が届くもの。お客様が異常に気付く前に迅速に対応できる仕組みです。

   社を挙げての一大ミッションにも関わらず、当時約100人いた保守チームの中で上司や先輩にさえ導入方法がわかる人がおらず、誰が担うにせよ手習いが必要。

「だったら、私がやってみよう!」

   Nさんは、導入担当に思い切って手を挙げたのです。

   ゼロから研修を受け、右も左もわからない状態からで、最初は手探り。それでも、何とか学び通し、役割を果たせたNさん。

   新システム導入が完了すると、お客様から「実作業が軽減された」「リスクが減った」と嬉しい声が届きました。Nさんは、初めて「自分の力でお客様の不安を取り除き、お役に立てた」と、達成感で一杯になったのです。

   嬉しい反応は、それだけではありません。先輩から「うちのお客さんも、よろしく頼むよ」と依頼がくるように。Nさんにとって、今まで雲の上の存在だった先輩エンジニアから、技術的な質問をされたりと、自分のスキルが皆の役に立っている喜びを実感できました。

「もっとスキルを磨き、喜んでいただけるお客様を増やしたい」

   Nさんは顧客やチームに貢献できる喜びと、さらなる成長への意欲が高まっていきました。

   入社から3年目。Nさんはこの自信をバネに、何と社内コンテストに参加することを決意します――。

   <「周囲に合わせなくていい。職場で一番になれるスキルを!」 劣等感に悩む若手がハッとした上司の一言(2)>に続きます。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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