総力を挙げて対抗してくる
GAFAの母国である米国にしてみると、アイルランドは米国が取るべき税金を横取りしているという話になる。そこでバイデン大統領は、税率の低い国がもうけられないように、世界の法人税の最低税率を15%に設定するよう提案した。これには、アイルランドのような国が棚ぼたで利益を得ているのを苦々しく思っていた欧州諸国や日本を含む140か国以上が賛成した。
この制度は近々日本でも導入される見込みだが、日本でのGAFAからの税収が増えるだろうか。理屈の上ではそうなるだろう。日本のように、GAFAの売り上げが非常に大きいのに今まで税金をかなり取りこぼしていた(とみられる)国にとって、税収増の余地が大きいことは間違いない。世界的枠組みの中で進められるのも、政治力がイマイチの日本にとっては好ましい。
しかし実際にどこまで効果があるかというと、怪しい面も残る。GAFAを始めとする巨大な多国籍企業にとって、税金に関する部分は最重要項目の一つ。総力を挙げて対抗してくるので、米国政府でさえなかなか思うように防御出来ていないのが現実だ。日本がそうそううまく立ち回れるとは考えにくい。しかも15%というのは、まだまだかなり低いので、結局は相変わらずアイルランドの天下が続くのかもしれない。(小田切尚登)
筆者プロフィール
おだぎり・なおと 幅広い分野で執筆活動やレクチャー等を行っている。バンク・オブ・アメリカ等大手外資系投資銀行数社で勤務した後独立。クラシック音楽サロン「シンフォニー」代表。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。『欧米沈没』(マイナビ新書)。