池袋暴走事故、飯塚幸三受刑者が「『申し訳ない』と述べた」 松永拓也さん明かした回答に驚きの声

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   妻と娘を失った池袋暴走事故の被害者遺族・松永拓也さん(37)が2024年4月7日、Xで「池袋暴走事故の加害者より、返答が来ました」として、その要旨を公開した。

   「被害者と加害者という立場を超え、一緒の目線で再発防止を考えることが重要」と訴える松永さんの主張と、事故当時の態度とは一変した飯塚幸三受刑者(92)=禁錮5年の実刑確定=の返答は、驚きをもって受け止められている。

  • 池袋自動車暴走事故遺族の松永拓也さん(2021年2月、公判後の会見より)
    池袋自動車暴走事故遺族の松永拓也さん(2021年2月、公判後の会見より)
  • 亡くなった真菜さんと莉子ちゃんの遺影とともに会見した、池袋自動車暴走事故遺族の上原義教さん(左)と松永拓也さん(2021年1月、公判後の会見より)
    亡くなった真菜さんと莉子ちゃんの遺影とともに会見した、池袋自動車暴走事故遺族の上原義教さん(左)と松永拓也さん(2021年1月、公判後の会見より)
  • 松永拓也さんのポスト。飯塚受刑者からの回答の要約が紹介されている
    松永拓也さんのポスト。飯塚受刑者からの回答の要約が紹介されている
  • 松永拓也さんが送った質問の内容
    松永拓也さんが送った質問の内容
  • 東京・池袋で2019年4月に起きた事故の現場。暴走し大破した乗用車(右)と、衝突され横転したゴミ収集車(左)(一部加工、ユーザー提供)
    東京・池袋で2019年4月に起きた事故の現場。暴走し大破した乗用車(右)と、衝突され横転したゴミ収集車(左)(一部加工、ユーザー提供)
  • 池袋自動車暴走事故遺族の松永拓也さん(2021年2月、公判後の会見より)
  • 亡くなった真菜さんと莉子ちゃんの遺影とともに会見した、池袋自動車暴走事故遺族の上原義教さん(左)と松永拓也さん(2021年1月、公判後の会見より)
  • 松永拓也さんのポスト。飯塚受刑者からの回答の要約が紹介されている
  • 松永拓也さんが送った質問の内容
  • 東京・池袋で2019年4月に起きた事故の現場。暴走し大破した乗用車(右)と、衝突され横転したゴミ収集車(左)(一部加工、ユーザー提供)

「本当に大切なことは、罪を償うこと『だけ』ではない」

   東京・池袋の路上で2019年4月19日、乗用車が暴走して松永真菜さん(当時31)と長女・莉子ちゃん(同3)が死亡し、男女9人が重軽傷を負った。東京地裁が21年9月2日に出した判決が確定している。

   松永さんは判決当時、禁錮5年という量刑について「大きな不満は、私自身今のところ感じていない」と語った一方で、「大前提として私はまず何よりも、被告人に2人の命、罪と向き合ってほしかった。それは残念ながらなかなか叶わなかった」とやりきれない胸中を明かしていた。

「加害者のことは、これだけの証拠がある中で、自分の過失を頑なに認めなかったのは、どうなのかなと思います。裁判官も仰っていましたが、判決に納得できるなら、罪を認めた上で心からの謝罪をしてほしいなと思います」

   事故の発生から約5年、判決からは約3年が経った24年4月、松永さんは「池袋暴走事故の加害者より、返答が来ました」としてXに一枚の文書を公開した。

   松永さんは3月23日、刑務所の職員を介して被害者が加害者本人に心情を伝えることができる新たな制度「心情等伝達制度」を通じ、飯塚受刑者に質問とメッセージを送ったことを明かしていた。

   こうした行動を起こした意図について、「本当に大切なことは、罪を償うこと『だけ』ではない」「本当に大切なこと。それは、誰しもが同じミスを二度と起こさず、同じような加害者と被害者を生まないよう、社会が取り組むこと」などと説明。その上で、「被害者と加害者という立場は明確に違う。それでも、その立場を越えて、一緒の目線で再発防止を考えることが重要だと思っています。私は彼の経験と、その言葉を社会全体の財産にしたい」と訴えていた。

   松永さんの質問と、それに対する飯塚受刑者の返答は以下の通りだ。

(1)どうすれば、この事故を起こさずに済みましたか。
→運転しないことが大事です。

(2)高齢者として、どのような社会であれば、事故を起こさずに済みましたか。
→運転しないことです。

(3)病院までの無料又は500円程度の送迎サービスなどがあれば利用しましたか。
→はい。

(4)医師から、明確に運転を止められていたとしたら、あなたは運転をやめていましたか。
→やめていました。

(5)事故当時、自分自身はパーキンソン病又はパーキンソン症候群の可能性があったと思っていますか。
→はい。

(6)パーキンソン症候群が運転をしてはいけないという分類に属されているとしたら、運転をやめていましたか。
→やめていました。

(7)家族からどんな声掛けがあれば、運転をやめようと思いましたか。
→やめるように強く言われていたらやめていた。

(8)高齢で刑務所に入る苦しみはどのようなものですか。
→(いろいろな規則や指示に)従うことが苦しい。

・上記(1)~(7)の回答を社会に伝えたいのですが、いかがですか。(原文ママ)
→差し支えない。松永さんにお任せする

・近いうち面会をしたい。出所後は対談したい。
→受け入れる旨の返答

「(いろいろな規則や指示に)従うことが苦しい」「運転しないことが大事」

   松永さんは、質問時の飯塚受刑者の様子について「私の心情や質問に対し、言葉を詰まらせる場面もあったものの、一文一文『はい』と返答をしながら、最後に『申し訳ない』と述べたそうです」と明かした。

   事故発生後から裁判時にかけては、頑なな態度を見せ世論の批判を受けた。今回の回答では対照的に「(いろいろな規則や指示に)従うことが苦しい」など率直な胸中を明かしつつ、「運転しないことが大事」など自らの過失を認め「申し訳ない」と反省を述べたという。

   こうした飯塚受刑者の変化は、松永さんが粘り強く対話を重ねた結果だとして、労う声や考えさせられたとする声が相次いだ。

「あの加害者の方に対して、ここまで懐を深く対応できる人間力に感服いたします。不勉強ながら初めて、ここまでの反省の意を見た気がします。何かの心の区切りになっていれば幸いです」
「加害者に対して憎しみをぶつけず、真摯に伝えようとした松永さんがただただ凄いなと思うばかりです。そう簡単にできることではありませんし、当初事故の原因は車にあると言っていた加害者が形式だけでもここまでの回答をしたことは再発防止を考える上で大きな一歩に繋がってくれる事を願うばかりです」
「辛いはずなのに。辛いはずなのに、この先の未来の人のために加害者に歩み寄ろうとする松永さんの姿勢に、なんという言葉を使えばいいのかわからないくらい感服。気をつけよう。明日は我が身ですから」
姉妹サイト