静岡県の川勝平太知事が2024年4月2日、前日1日に県庁で新入職員に対して行った訓示の内容をめぐり、6月の県議会をもって辞職することを表明した。これによって、にわかにリニア中央新幹線についての話題が盛んになっている。
リニアをめぐっては、川勝知事が県内の工区について一貫して慎重な立場をとっており、同区間は未着工のままだった。その川勝知事が辞任するとあって、工事が始まるのではないかとの期待が一部で高まっている。果たして前進はあるのか。
「勝者の証明としてこの時期の辞職を選んだ」
静岡工区は南アルプスの地下にトンネルを掘削することが計画されている。工事を推進しようとするJR東海と、工事によって地下水が漏れ、県内を流れる大井川の流水量が減少すると主張する川勝知事の間で対立が続いていた。
また、リニア新幹線の開業時期は当初27年が見込まれていたものの、23年12月にはJR東海が「27年以降」という表現に改めた。さらいに、24年3月29日には27年の品川~名古屋間の開業を断念することを明らかにした。
対立軸の片側が消滅することで事態は動くのか。鉄道に詳しいライターの小林拓矢氏は「たとえ川勝知事が辞職したとしても、リニア中央新幹線の工事がスムーズに進むとは限りません」と指摘する。
「そもそも、川勝知事の辞職理由として、リニア中央新幹線の2027年開業をJR東海に断念させたというものがあり、むしろ川勝知事はJR東海に勝ったのです。勝者の証明としてこの時期の辞職を選んだということも言えます」
事実、川勝知事が辞意を表明する4日前にはリニア新幹線の27年開業が断念されたことが発表されたのは前述の通りだ。また、小林氏は以下のようにも語った。
「次の静岡県知事に、川勝知事の考えを継承する人が当選したら、当然ながらその知事はリニア中央新幹線の着工を認めないと想定。川勝知事は静岡県内では支持されており、現県政の路線を継承する候補が次の知事に当選することは十分にある話です。新知事に対してJR東海がどう向き合うかが、第一の課題といえます」
静岡以外の工区でも工事が遅れている
また、小林氏は開業の遅れについて「静岡工区の工事に取り掛かれないのが理由の一つでもありますが、ほかの工区でも工事開始が遅れ、着工後も工事の進み具合に問題があるという状況だからです」と、必ずしも静岡工区の未着工だけが原因ではなく、「そのほかにも、難工事の箇所が多い現場をどう解決していくかが課題となっています」と、他の工区が難航していることにも留意すべきと語る。
具体的な状況として小林氏は、山梨県・静岡県・長野県では山岳部のトンネル工事が難航、また、東京都・神奈川県・愛知県では大深度のトンネル工事がやはり難航、さらには長野県には工事残土の問題が発生しているほか、水資源は山梨県に懸念材料、そして、「大井川水問題はまさに川勝知事が重要視しているところです」と、静岡県の工区の問題は今後も難問として立ちはだかると指摘した。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)