さまざまなキャラクターのカードで遊ぶトレーディングカードゲーム(トレカ=TCG)が、世代を超えて幅広い人気を集めている。
有名どころは「遊戯王」や「デュエル・マスターズ」などだが、近年は「ポケモンカード(ポケカ)ゲーム」が特にブームだ。
なぜこれほどのブームになったのだろうか。
2016年発売の「GXスタートデッキ」がブームの火付け役
「当時、ポケカは非常に地域差があるゲームでした」
こう振り返るのは、トレカ専門家の後藤寛氏だ。後藤氏は2004~11年までカードショップに勤務していた。「地域差がある」というのは、トレカショップの多い秋葉原や、ポケカが浸透している一部地域以外のカードショップでは、基本的に需要がなかった。
だが、2024年2月のTCG新作商品の売り上げでは、2位の「遊戯王」の倍以上にポケカが売れているという。後藤氏がカードショップに勤務していた時期と比べると状況は異なり、「ポケカ一強」の感があるようだ。
ここで、ポケカについてあらためて説明しよう。ポケカこと、ポケモンカードゲームは、ゲームソフト「ポケットモンスター(ポケモン)」シリーズの世界をテーマにしたものだ。
最初の商品は1996年に発売された。以来、弾を重ねているが、最近では、新発売の弾が出ると、それを求めて行列ができるなど、人気を集めている。
いまや、カードショップでも高額で取引される。
前出の後藤氏によれば、2000円以下だったあるカードは、注目度が高まった2018年ごろには約1万8000円で取引された。2022年には20万円を超えるものもあった。近年は転売目的でポケカを購入する人も少なくなく、資産としての要素も強まっている。
ポケモンカードが2018年ごろから人気になった理由について、後藤さんは「1996年発売から20周年を超え、ブランドとしての価値が高まった」と、J-CASTニュースBizの取材に説明する。
また、さかのぼること2016年に発売された「GXスタートデッキ」もブームの火付け役に。
これだけ買えば、すでにカードが構築されているため、すぐ遊ぶことができる。この商品が500円という低価格で販売されたことや、YouTuberのインフルエンサーが取り上げたことで、プレイヤーが一気に増えたという。
ポケカが資産としての要素が強まった理由は
後藤氏は、ポケカの役割も変化している、と指摘する。
1996年の発売当初は「子どもの玩具」だったが、25年以上が経過したことで「世代を超えて楽しめる親子のコミュニケーションツール」になったと説明する。
さらに、ポケカを始めやすい理由に「スタン落ち」というルールもある。専用のルールが設けられた大会以外では過去のカードが使えなくなるというもので、新規プレイヤーが参入しやすいルールが設けられている。
遊戯王やデュエル・マスターズに比べてポケカが人気を博すのは、スタン落ちがあるからだと、後藤さん。
「遊戯王やデュエル・マスターズはスタン落ちがないので、新規ユーザーが参入しづらいです。特に遊戯王はルールが複雑化したことで、新規プレイヤーが増えない事が売上減少に繋がりました。一方、デュエル・マスターズには新規向けの大会があります。」
また、ポケモンは国内外問わず人気のゲームだ。ポケカ以外のグッズ展開も安定し、希少なグッズの価値も高まっている。
ポケモンが長く続くほど資産価値が高まる事が確定しているため、「高いブランド力を持ち、大人も楽しめる遊べる美術品」という価値も生まれているという。
先述したように、18年ごろを境に、右肩上がりにポケカの価値が上がる中、さらに大きな話題になったのは23年1月発売のカードパックだ。「スカーレットex」「バイオレットex」収録のカードで10万円を超えるものがあり、メディアでも取り上げられたという。
資産としての要素が強まった理由について、後藤氏は「熱心なコレクターも増え、サービス終了でカード資産がなくなるリスクがなくなったことで投機案件としての魅力が急速に高まりました」と話す。
ちなみに現在までに、最高金額の約7億円で取引されたポケカは、非常に希少な「ポケモンイラストレーター」というカード。個人売買で販売された最も高価なポケカとしてギネスブックにも認定されている。