小林製薬(大阪市)の「紅麹」を含むサプリメントで健康被害の報告が出ている問題で、同社の対応が遅かったとの批判が上がっている。最初に医師から症例の報告を受けてから製品の自主回収を発表するまで、約2か月かかったためだ。
同社の対応の問題点を、関西大学社会安全学部教授の亀井克之氏(リスクマネジメント論)に取材した。
そもそも紅麹が原因なのかが分からなかった...
小林製薬は2024年3月22日、同社の紅麹を含む健康食品を自主回収すると公式サイトで発表した。同日の会見で、最初に症例の報告を受けたのは1月15日だったと説明。この紅麹に関連した製品を各社メーカーが自主回収する動きも広がった。
発表が遅いとの批判に対し、小林製薬の小林章浩社長は3月29日の会見で謝罪した。当初は原因が何か、そもそも紅麹が原因なのかが分からなかったと説明。原因物質を特定する研究部門の取り組みを踏まえ、同社のガイドラインや社外の弁護士の意見などを加味して判断していたという。
前出の亀井氏は、紅麹をめぐる小林製薬の問題では「情報開示のあり方が問われている」と指摘する。現状では、情報開示が足りていない。例えば何人の医師から報告を受けたのか、どのような報告だったのかなど、より具体的に情報を明らかにするべきだとの見解を示す。
早期回収に伴うコスト以上に悪影響
対応自体、明らかに遅かったとも。原因物質の特定に時間がかかったのは事実だろうとする一方、同社製品が健康被害を与えた可能性があると分かった段階で、早めに公式サイト上での注意喚起や記者会見といった対応を取るべきだったと話す。
原因が特定できない状況での製品回収は、企業側にコスト面での懸念が生じる。しかし、今回の例では、早期回収に伴うコスト以上に悪影響が出ていると、亀井氏。発表が遅れたことによる被害拡大のほか、ブランドの毀損や同業他社への影響が出てしまったと指摘した。