ロスジェネ世代はつらいよ...昨年は「歴史的賃上げ」でも賃金増えなかったが、今年は恩恵ある?(1)/第一生命経済研究所の永濱利廣さんに聞く

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ロスジェネ世代が「保守的」な理由は

   J‐CASTニュースBiz編集部は、第一生命経済研究所の永濱利廣さんに話を聞いた。

――ロスジェネ世代の賃金が低く抑えられている一番の理由は何でしょうか。

永濱利廣さん いまだに日本企業の多くが年功序列型賃金になっていることがあげられます。50代前半頃まで上がり続けて、まさにロスジェネ世代が総賃金の最大のボリュームゾーンになりますから、企業は人件費抑制のためにここを抑えようとします。

また、ひと昔前まで労働組合も高い賃上げを要求してこなかったことも問題です。雇用の維持を優先させ、賃下げや非正規雇用の拡大を受け入れてきたからですね。しかも、ロスジェネ世代が管理職になると、非組合員になりますから組合の保護から外れます。

組合のある会社でさえそんな状態のうえ、そもそも日本企業の組合の組織率は16%前後しかありません。ロスジェネ世代は就職前にも苦労の連続、就職後も苦難の道を歩んできたと言えるでしょう。

――リポートでは、ロスジェネ世代が「もとも保守的で転職したがらない」ことも賃上げの恩恵を受けなかった理由の1つと指摘していますが、「ロスジェネ世代が保守的」というのはどういう意味でしょうか。

永濱利廣さん 私自身もロスジェネ世代の1人だからわかりますが、就職氷河期に苦労してやっと会社に入ることができれば、心理的に転職に保守的になります。「35歳の壁」と言われるように、よほど自分のスキルに自信がある人でないと、転職の冒険に一歩踏み出すのは難しいでしょう。

2009年に米カリフォルニア大学のギウリアーノ教授と、IMF(国際通貨基金)のスピリンバーゴ氏が米国のデータをもとに、若い頃の「経済環境」が、その世代の価値観に影響を与えることを実証的に明らかにしています。

高校や大学を卒業して数年間に不況を経験するかどうかが、その世代の価値観に大きな影響を与えるというものです。

具体的には、18歳~25歳の不況経験で、その世代の価値観が決まります。そして、この価値観は、その後年齢を重ねてもほとんど変わらないとしています。
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