介護サービス大手「木下の介護」(東京都新宿区)が運営する東京都内の施設内で、若い女性職員が入所者を介助する様子などを動画サイトで配信していたことが分かった。
中には、入所者に愚痴を言ったり、入所中の高齢者女性の姿が映ったりする場面もあった。木下の介護は、「入所者の方やご家族には、報告して謝罪しています」と取材に話し、職員に対しては「厳格な処分の対象になります」と述べた。
「ツイキャス」生配信が問題化
「お布団、戻るよ。よしよし、食べて」。茶髪の若い女性職員が、髪の左側だけを配信で映しながら、入所者を介助する様子を紹介する。
「よいしょ、よいしょ。座って、よいしょっと」「寝っ転がって下さい」。
その背景には、別の職員が入所者らしき高齢者女性の手を引く姿が映っていた。
この動画は、暴露系ユーチューバーのコレコレさんが2024年3月17日、ユーチューブのチャンネルでライブ配信した。
介護施設で勤務中に動画サイト「ツイキャス」で生配信している女性がいて、「きもい」とのコメントを載せたりするなど酷かったとして、施設の特定に協力してほしいと視聴者から依頼があったという。
他の動画を見ると、入所者への愚痴も聞かれた。
「ずっと起きて来るのどうにかしてほしいんだけど」「5分に1回起きて来るって、暇なんだって」
こんな発言をしながら、画面には「きもい」とのコメントが表示された。
キャンディのチュッパチャプスをくわえながら、施設内を回っているとする様子の映像もあった。このほか、配信では流せないとされたが、入所者との会話を流している内容もあったという。
ライブ配信では、女性が着ていた制服や施設の内壁などの様子から、木下の介護の施設ではないかとの指摘がコメント欄に寄せられた。その後、X上などでは、同社が運営する東京都内の老人ホーム施設ではないかとする指摘があり、自治体に通報したといった報告まで出た。
普段より仕事が落ち着いて「魔が差した」と釈明
投稿された動画について、木下の介護は4月1日、J-CASTニュースの取材に対し、同社が運営する都内の施設内で動画が撮られたことを担当者が認めた。
動画を撮ったのも、この施設に勤務している女性職員だとし、この職員から聞き取った結果について答えた。
それによると、この職員は勤務中、普段より仕事が落ち着いて時間ができたため動画を撮ったといい、「魔が差した」と説明した。施設内でずっと動画を撮っていたわけではないという。また、「きもい」という表現は、入所者に対して使ったわけではないとした。プライベートで嫌なことがあり、動画を見に来てもらいたいとの思いがあって、この表現を使ったという。
チュッパチャプスをくわえながら施設内を回っていたことについては、このキャンディをなめているときにナースコールがあったからだと話した。普段は、このようなことはしておらず、こうした行為は初めてと釈明したという。
木下の介護では、勤務中の動画配信について、「入所者の方のプライバシーに関わりますので、許可は下りません」と述べ、この職員が無断で行ったとした。こうした行為について、「重く受け止めています」と述べ、次のように話した。
「動画に映った入所者の方の特定もできており、ご家族にも事実関係を詳細に報告して謝罪しています。今後は、施設内の運営懇談会を開催して、運営状況をご説明したいと考えています。東京都にも、今回のことを報告しており、都からは、指導対象になると言われています」
施設を管轄する都の施設支援課は1日、次のように取材に答えた。
「勤務時間中に施設内で動画配信するのは、好ましくないと思っています。木下の介護からは、入所者や家族向けの運営懇談会を開き、説明や謝罪をするとの報告を受けています。今回の件を踏まえ、現地で運営状況や再発防止策を確認するなど、しっかり指導していきます」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)