「よろしくお願い"致します"」か「よろしくお願い"いたします"」か――。頻繁にビジネスメールで使われる語句だが、漢字か仮名のどちらで表記するかは人によって分かれるようだ。
上記の話題は複数メディアが過去に取り上げ、たびたび注目を集めている。「致します」以外にも、ネットでは「頂きます」など書き分けを迷う表現を解説するサイトがある。漢字と仮名、正しい・誤りはあるの?
国語辞典の編集委員に聞くと
直近では、週刊誌「女性自身」が2024年3月16日付の記事で、「致します」の書き分けについて報じた。だが、この他にも迷う表現はある。ネットでは「下さい」「頂きます」「~して欲しい」などを解説する記事もあった。
J-CASTニュースBiz編集部は、「例解学習国語辞典」(小学館)の編集委員を務める中部大学現代教育学部教授の深谷圭助氏に話を聞いた。「下さい」「頂きます」をどのように書くべきか。
「漢字で書くことは丁寧でかしこまった言葉遣いと思いがちですが、迷ったら素直に平仮名で書けば良いのです。漢字は単に当て字で使われていることも多いです」
「致します」は「いたします」で良い。「致」という漢字は、後で当てた可能性が高いという。「下さい」も「ください」と書くほうが望ましい。「ください」は現代口語では要求表現で用いられるため、平仮名が適切だと話す。
仮名書きが推奨された経緯
深谷氏によれば、第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が漢字書きよりも仮名書きを推奨したという。日本語学習者の負担を減らすためだ。当分用いる漢字として「当用漢字表」を設定し、その範囲で漢字を使うことになった。これが現在の「常用漢字表」に繋がる。
「たくさんの読み方があるといって、全て漢字で書く必要があるわけではありません。表音文字の仮名文字を使えばちゃんと意味が通るわけですから、漢字を不自然にあてて書く必要はないのです」
常用漢字表にない漢字は「常用外漢字」と呼ばれる。例えば、「薔薇」などが当てはまる。こうした漢字は別の語に置き換えたり、平仮名で書いたりするルールもあると説明している。