X(Twitter)では「日本語の誤用」にまつわる話題がたくさんあります。
テキスト主体のSNSであるXは、世代や地域を問わずさまざまな人たちと交流できる便利なツールですが、一方で言葉の誤用によるミスコミュニケーションも少なくないようです。
ツイートまとめサービスのTogetter(トゥギャッター)が解説する「3分くらいで分かる週刊X(Twitter)トレンド【J-CAST出張版】」、今回は「日本語の誤用」について掘り下げます。
「琴線」と「逆鱗」から見る「誤読回避」の難しさ
先日もX上でのあるやりとりを見たユーザーが「マジか、『琴線に触れる』を『逆鱗に触れる』の意味で使う人がいるのか...」とショックを受けたことを投稿し、話題を集めました。
小学館のデジタル大辞泉によると、「琴線に触れる」は「良いものや、素晴らしいものに触れて感銘を受けること」とありますが、上記のやりとりでは「怒りを買ってしまう」という真逆の意味で用いられる「逆鱗に触れる」と、混同して使っていたようです。
こちらのやりとりを見た前述のユーザーは「どんなに丁寧に言葉を選んでも、そんなんやられたら誤読を回避するなんて不可能じゃんか」とコメント。他のユーザーからも「曲解する、読めない、読まないの三拍子がSNS誤読コミュニケーションの基本」と皮肉る声が寄せられていました。
「琴線に触れる」を「逆鱗に触れる」の誤用する人の存在を知って誤読回避は不可能だと気付いた話...「役不足」「二の舞を踏む」「透明化」などの誤用も- Togetter
X上では他にも「二の足を踏む」「役不足」「気が置けない」など、本来の意味とは違った使い方がされている言葉の例が複数挙げられています。
言葉を正しい意味で伝えられているか、折に触れて辞書を引いたり、誰かに伝える前に確認する習慣をつけると、ミスコミュニケーションを減らすことができるかもしれません。
「1時間弱」は1時間より多い?少ない?
それから、Xでは「1時間弱」という表現に関してあるユーザーの投稿が話題になりました。
そのユーザーは「例えば【1時間弱】と言うと【1時間より少し少なめ】を想定していると思うのですが、20代前半以下の若者は【1時間より少し多め】を想定しているらしい」と投稿。若い世代では「〇〇弱」の使い方が異なるようだと伝えていました。
最近の若者は「1時間弱」を「1時間より少し多め」と理解しているらしい「もう【○弱】使えない...」 - Togetter
こちらの投稿に対し、俳優の松尾貴史さんが「初耳です。では【◎強】はどうなるのでしょう」とコメントするなど、多くのユーザーが反応。
一方で、「40代ですが1時間弱は1時間より長めを想定しています」というユーザーも見られるなど、若い世代に限らず「◯◯弱」を「〇〇+α」という感覚で捉えている人は少なくない模様。
本来、「〇〇+α」という意味を持っていた「〇〇強」は使わないため違和感を覚えなかったとしています。
いずれにせよ、人によって「〇〇弱」の解釈に範囲に差があることから、「もう【◯弱】使えないな......」と困惑するコメントも見られました。
また、Xではほかにも「日本語の使われ方の変遷に立ち会った気分だわ!!」と日本語の誤用ではなく変化と捉えるコメントも見られました。
言葉の意味は時代によって変化することがありますが、今回の「〇〇弱」を巡る議論は単なる誤用ではなく、こうした変化の現れだったのかもしれません。
国語辞典に載っていない「酒池肉林」のもうひとつの用法とは
ここまでいくつか誤用の例について触れましたが、一概に誤用とは言えないパターンも存在します。
国語辞典編纂者で知られる飯間浩明さんがXに投稿した「酒池肉林」に関する用法について、注目が集まりました。
「酒池肉林」は「酒をたたえた池と、肉をかけた林」という中国の故事に由来して「贅沢な酒宴」を意味する言葉として使われます。
しかし、Xでは「性的な乱れ」を示すニュアンスで用いる人も散見され、しばしば用例についての議論が巻き起こります。「性的な乱れ」というニュアンスで使うことを否定的に捉える意見としては、「辞書に載っていない」ことを理由に挙げる人もいるようです。
これに対し飯間さんは、「辞書の作り手としては、むしろ『このニュアンスの用法を辞書に載せてなかった!』と敗北感に浸ります」とコメント。
また、投稿に添付された画像には、太宰治や山田風太郎などによる過去の文学作品を引用するかたちで、「酒池肉林」が性的なニュアンスを伴って使用されている用例について解説していました。
言葉の意味が辞書にないから誤用ではなく、作り手としてはむしろ「このニュアンスの用法を載せてなかった!」と敗北感に浸る - Togetter
さらに飯間さんは、「性的に乱れたニュアンスで使われることも知っておかないと、文学作品の読解もできない場合があります」と投稿。言葉には複数の意味や用法、ニュアンスで使われることが普通であることを説明しました。
他のユーザーからも「言葉は変化することこそが真の魅力だと思う」「辞書にあるから言葉が正しいのではなく、言葉があるから辞書に載るんだもんな」と、多くの賛同が寄せられました。
「酒池肉林」に関する飯間さんの投稿は、辞書にも載っていない意味や用法が存在することを伝えるだけでなく、言葉の持つ多様さを教えてくれます。
Xでは毎日のように言葉を用いた活発なコミュニケーションが繰り広げられています。
その中で、もし違和感を覚えた言葉があったときは、辞書に載っていないから誤用とすぐさま判断するのではなく、その言葉の持つルーツや本来の意味を調べてみると、言葉に対する理解がより深まるかもしれません。
以上、Togetterがお送りする「3分くらいで分かる週刊X(Twitter)トレンド【J-CAST出張版】」でした。今回紹介したTogetterまとめを振り返りたい方はこちらからどうぞ。次回もお楽しみに。
【まとめ一覧】
「琴線に触れる」を「逆鱗に触れる」の誤用する人の存在を知って誤読回避は不可能だと気付いた話...「役不足」「二の舞を踏む」「透明化」などの誤用も- Togetter
最近の若者は「1時間弱」を「1時間より少し多め」と理解しているらしい「もう【○弱】使えない...」 - Togetter
言葉の意味が辞書にないから誤用ではなく、作り手としてはむしろ「このニュアンスの用法を載せてなかった!」と敗北感に浸る - Togetter