採用の成功要因が「先生との関係構築」でいいのか
逆にみると、「内定をとれない生徒」や「コストをかけずに若年労働力を確保したい企業」に配慮した仕組みといえるかもしれない。Aさんは頭を抱えた。
「従来の慣習って、高校と生徒、求人元にとっては都合がいい部分があるんでしょうけど、高卒者を採用したい新しい企業にとっては、既得権であり参入障壁になりますよね。私たちとしては、学生に新しい選択肢を示す情報を届けたいと思っているけど、それもかなりしにくい状況です」
実際、先の株式会社ジンジブの調査で、高卒者の採用を「計画通り充足した」と答えた企業では、応募につながった理由として「先生との関係構築」を挙げた人が50.6%と最も多かった。「給与や福利厚生などの条件面」の50.0%を上回っている。
一方で、Aさんは「高校の先生からすると、都内の新興IT企業なんて信用ならないし、生徒保護の観点からも、地元の工場や農協とかに優先して斡旋するんでしょうね」と、学校の立場について理解を示す。
なお、国の有識者会議は「1人1社制」の見直しを呼びかけているが、実際に見直しを行ったり、複数応募を可能にしたりするところは大阪府など数県。東京都は対応を未定としており、「継続」が多数のようだ。