生徒数の減少と進学率の上昇で「競争激化」
厚生労働省によると、2024年3月卒の高校生の求人倍率は、2023年9月末時点で3.79倍にのぼり、1988年(昭和63年)以降最高水準となった。一方、求職者数は約12.3万人で、前年同期比で4.8%の減少している。
株式会社ジンジブが採用担当者を対象に実施した調査によると、2024年卒の高校新卒採用の採用人数について、「計画通りに充足した」と答えた会社は回答者の28.9%にとどまる。「1名も応募が来ていない」と答えた会社は16.5%もあった。
また、昨年と比較して、求人募集人数を「増やした」と答えた会社は27.7%。増やした会社の理由では、「若手人材の採用に力を入れるため」が68.1%。
次いで、「社内の高齢化が進んでいるため」が46.7%、「退職者の増加による人員確保のため」が42.5%と、緊急性を要する理由で人員を補充する会社の割合が半数近くにのぼっている。
「1人1社制」など一見不合理に思える慣習の高卒採用は、生徒数の減少にあわせて進学率の上昇の影響もあり、高卒採用の競争は激しさを増しているということになる。
一方で、従来のやり方を見直す動きもある。
2020年2月に文部科学省と厚生労働省が高卒者の採用慣行の見直しに関する報告書をまとめたが、検討会議の資料では、仮に「1人1社制」の撤廃等の見直しをした場合、以下の6つの影響が見込まれるとしている。
(1)内定をとれる生徒ととれない生徒の二極化が生じ、就職活動が長期化
(2)企業にとって、内定辞退されるリスクが高まり、採用選考活動が長期化することでコストがかさむ
(3)就職活動が長期化することによる学事日程への影響
(4)複数応募による生徒の身体的・心理的・経済的負担
(5)知名度の高いBtoC企業や大手企業への応募が高まり、BtoB企業や中小企業への応募がより減少
(6)県外(特に大都市部)企業への就職による地方の若年労働力流出の懸念