東京都内で働く人の間では、「終電の時間」が話題になることがかつては多かった。会社の飲み会などでいつまでいられるのか、というほほえましい話もあれば、どれほど遅くまで残業できるのか、という残酷な話もある。
いずれにしても、長時間職場やその人間関係に拘束されることはある意味「勲章」であり、ある種のハードワークが日本型ビジネスパーソンの理想とされていた時代は「働き方改革」が言われるまで続いた。実は、いまでも心の中ではそちらのほうが正しいと思う人も多いはずである。
そういう状態にある人にとっては、夜遅い時間帯の鉄道運行というのは気になるものだ。
終電が早まり、本数が減り
近年、終電の時間が早まり、また深夜帯の列車本数も減っている。深夜帯の利用者が少なくなっているから、鉄道のメンテナンス部門の人手が足りずに工事時間を増やすことで対応したい、といった理由がある。
終電の数時間前から、列車の本数は少しずつ減っていく。
10分間隔のパターンダイヤだったものが12分間隔や15分間隔になったり、上位の列車種別が減ったりする。そうなると、帰宅するのに時間がかかる。
遅くまで働いていると(あるいは会社の上司などに飲まされていると)、帰るのが大変になるのは感じる人も多いのではないだろうか。
1時間以上も相互乗り入れなし
その象徴と言えるのが、相互乗り入れが深夜になると減っていくということだ。たとえば東京メトロ東西線と中央・総武緩行線の乗り入れについて見てみよう。なお、ここで挙げるのは平日である。
大手町21時38分発、高田馬場21時52分発、中野22時00分発の三鷹行が、東西線から中央・総武緩行線に乗り入れる最終である。中野行は中野着0時33分まであるものの、都心から帰る人は必ず中野で乗り換えが必要になる。大学時代中野駅での乗り換えをよく経験したので、この駅の面倒くささはよく感じたものである。
並行する都営新宿線と京王電鉄の相互乗り入れを見てみよう。都営新宿線と京王電鉄は新宿駅で会社が変わるものの、京王新線の新宿(新線新宿ともいう)から笹塚までは都営新宿線の延長ともいえるような区間であり、笹塚から先になってようやく京王電鉄になるという印象を受ける。
京王電鉄の側からすると、「新宿~笹塚間の運行を引き受けているからいいではないか」と考えるかもしれないが、乗る側からすると「遅い時間でも、もっと先に行ってほしい」となる。都営新宿線からの列車は、新宿22時01分発以降、23時04分発と1時間もなく、その先は0時16分若葉台行きが、笹塚より先に向かう最後の列車となる。22時以降、京王線の新宿駅をふくめて、列車の本数が減っていく。1時間以上相互乗り入れがなくなってしまうと、もう使いにくいことこの上ない。
では、東京メトロ千代田線と小田急電鉄はどうなのか。こちらは代々木上原で会社が切り替わる。代々木上原22時08分発急行、22時27分発急行、22時57分発急行と続き、最終は23時28分発準急成城学園前行きとなる。この時間帯になると代々木上原での乗り換えが多くなる。
直通を前提とした路線では?
ここまで挙げてきた路線は、相互乗り入れがイレギュラーとなっている路線である。では、相互乗り入れを前提にした路線はどうか。東急東横線は、深夜帯に渋谷発の列車が増えていく。東急目黒線は、地下鉄からの直通は多いものの、相鉄方面に向かう列車は減っていく。さすがに東急田園都市線は、東京メトロ半蔵門線からしっかりと直通している。
西武池袋線や東武東上線は少ないながらも直通を維持している。東武スカイツリーラインもそうだと見ていい。京急電鉄も同様。京成電鉄は、押上~青砥間は都営浅草線と一体となっていると考えたほうがいい。
地下鉄とJR・私鉄の相互乗り入れをやっている路線でも、路線によって事情は異なる。こちらの「最終」を把握しておくことも、都心で働くビジネスパーソンには必要なことではないか。そうでないと、乗り換えや待ち時間などで帰るのに時間がかかるだろう。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。