京都大学が2024年3月21日、理学部と工学部で「女子枠」を設けると発表した。2026年度入試からとなる。対象となるのは理学部と工学部で、理学部は女子15人を、工学部は24人を女子枠として新設する。
25日には広島大学が、26年度入試から理・工・情報科学の3学部に女子枠を設置すると明らかにした。いずれも推薦・総合型入試の枠組みを使い、定員は計37人という。こうした「理系学部の女子枠」のねらいを、考えてみた。
国の意志が反映された結果か
J-CASTニュースBiz編集部は、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に取材した。「少子化を見越した受験生の囲い込み策」という批判があるとするなら、それは認識違いとキッパリ。囲い込みが目的なら、全学部で行われるはずだと指摘する。
石渡氏は、女子枠の設置が「ブーム」になっている理由として、国の後押しを挙げる。2023年6月2日に文部科学省が出した「令和6(2024)年度大学入学者選抜実施要項について(通知)」の「多様な背景を持った者を対象とする選抜」という項目に、
「各大学において入学者の多様性を確保する観点から対象になると考える者(例えば、理工系分野における女子等)」
という文言があると指摘。「例として『理工系分野の女子』とわざわざ出しています」。女子枠の設置は国の意志が反映された結果なのではないかとみる。
産業界もいら立つ
石渡氏は「理工系分野で女子枠入試を実施しないと、理工系学部で男女比を是正できない、国や産業界の焦りが反映されています」とも。文科省「学校基本調査」(2022年)によると、理学部系統の学生数は男子5万7379人、女子は2万2141人。また、工学部系統は男子32万2418人、女子6万0383人。どちらも女子の比率が圧倒的に低く、この傾向は長年変わっていないと説明する。
「海外の先進諸国と比較しても非常に少なく、産業界は技術職や研究職などで女子学生を採用できず、いら立っています」
技術職・研究職で女性を採用できないと、まず、欧米系の株主から「男性優遇か」と批判される恐れがある。さらに、女性の視点がない企業は将来的に国際競争力を維持できない、とも言われている。
「そのため、理工系学部で女子学生を増やすための方策として、女子枠入試が導入され現在に至っています。大学側も国・文部科学省のお墨付きであり、産業界の後押しもあることから、今後も導入する大学は増える見込みです」
と分析した。
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)