プロ野球巨人は2024年3月26日、新外国人選手ルーグネッド・オドーア外野手(30)が退団することを発表した。
大リーグ通算178本塁打を誇る助っ人の開幕直前の電撃退団。今シーズンから指揮を執る阿部慎之助監督(45)体制にどのような影響を及ぼすのか。
J-CASTニュースでは、巨人で戦略コーチを務めた経験を持つオイシックス新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏(58)に分析してもらった。
「オドーアのオープン戦の状態を見る限り実力に疑問符が付く」
オドーアは大リーグのテキサス・レンジャーズ、ニューヨーク・ヤンキースなどを経て、24年1月に巨人に入団。2月16日の沖縄2次キャンプからチームに合流し、打線の主軸として期待されていた。
だが、オープン戦では34打数6安打の打率.176、本塁打ゼロ。24日の楽天戦が日本での最後の試合となった。
オドーアの前代未聞となる開幕直前の電撃退団に、橋上氏は「球団にとっては想定外だと思います」と前置きしたうえで、チームに与える影響について次のように語った。
「攻撃力を期待していたでしょうから痛手といえば痛手だが、オープン戦の状態を見る限り、実力に疑問符が付く感じでした。チームにいたら使わざるを得なかった状態だったところが、退団したことで本来使いたかった佐々木(俊輔)選手や丸(佳浩)選手らを起用することができる。このほかにも何人か候補はいる。守備力、攻撃力、機動力を含めるとオドーア選手が抜けたところに入る日本人選手の方が、シーズンが終わってみたらプラスになっていたということもありうると思います」
現役時代、ヤクルト、日本ハム、阪神でプレーし、引退後は巨人、ヤクルト、楽天、西武のコーチを歴任した橋上氏。40年近くにわたって日本プロ野球界で活動してきた経験から、オドーアが開幕を待たずに退団した理由についてこのように推測した。
「日本の野球というよりは、日本の生活習慣になじめなかったのだと思います。外国人選手の場合、日本で結果を残すには環境に順応できるかが大きなポイントになる。これに加えて、ファームでの調整に納得がいかなかったのでしょう」
続けて、近年来日した外国人選手の実力と、今後の外国人「助っ人」に対する球界の展望に言及した。
「外国人選手が昔ほど額面通りに活躍できるかといえば...」
橋上氏は、こう解説する。
「昔は絶対に2軍に落とさないというような契約をしていた外国人選手がいたようですが、外国人選手が昔ほど額面通りに活躍できるかといえば、そうではない。今は日本のピッチャーのレベルが高いので、打てる外国人選手が減っているのも事実。ですので、昔のように2軍に落とさないという契約を結んでいる選手はほとんどいないと思います」
スポーツ紙の報道によると、巨人はオドーアと年俸2億円(金額は推定)の1年契約を結び、契約の中に2軍落ちさせないという条項は盛り込んでいなかったようだ。
橋上氏は今回のオドーアの退団を踏まえ今後、日本の球団が外国人選手を獲得するにあたって変化が出てくるのではないか、と推測した。
外国人選手=「助っ人」という扱いではない 日本の投手レベルも高い
橋上氏は「現在は外国人選手イコール『助っ人』という扱いではなくなっている。やってみないと分からないというような感覚になってきている」とし、こう解説した。
「外国人選手の野手にかぎっていえば、昔みたいにいきなりホームランのタイトルを取るような選手をなかなか望めない。昔の助っ人と同じくらいの成績を残している選手があまりいないのが現状です。来日する外国人選手の質の問題ではなく、日本のピッチャーのレベルが世界的に高いということだと思います。今後、アメリカで実績を残した高額年俸の選手を獲得するということが難しくなってくるかもしれません。失敗してもあまり痛手を被らないような年俸の安い選手を数名獲得し、その中のひとりが当たればよい、という感じの補強になるかもしれません」
新外国人助っ人の電撃退団に揺れた新生阿部巨人。29日の開幕戦は本拠地・東京ドームで昨シーズンの覇者・阪神を迎え撃つ。