ソニーグループがVR(仮想現実)機器「PlayStationVR2」(PSVR2)の生産を一時休止していると、米メディア「Bloomberg」が報じた。家庭用ゲーム機「PlayStation(PS)5」向けのVRヘッドセットで、2023年発売。没入感のあるゲーム体験を楽しむことができる。
PS5の売れ行きは、全世界累計実売台数が5000万台突破するなど好調にみえる。一方、周辺機器のPSVR2が伸び悩む理由を探った。
「生産が休止したとしても全然おかしくはない」
24年3月18日付の前出の記事によれば、23年2月に発売したPSVR2の生産を同年末から一時休止。販売は減速しているが、200万台以上を生産済みだという。2016年発売の前世代モデル「PSVR」は、19年12月末時点で500万台以上を売り上げた。
J-CASTニュースBizは24年3月21日、PSVR2生産休止の事実確認をソニーグループに問い合わせたが、記事公開までに回答は得られなかった。
ゲーム業界に詳しい東洋証券のシニアアナリスト・安田秀樹氏に取材した。報道の内容が事実かどうかを除いても、「PSVR2の生産が休止したとしても全然おかしくはない」との見解を示す。
安田氏はPSVR2を含めたVRの問題点を3点挙げた。1つ目は、遊ぶためのコストパフォーマンスが悪い点だ。通常のゲームであれば数時間遊ぶことも可能だが、VRで長時間は難しい。1時間でも苦痛だとの声もあったという。
2つ目は、VRユーザーの見栄えが悪い点。VRゴーグルをかぶった利用者以外、どのようなゲームをプレイ中なのか分からない。その本人が突然振り返ったりすると、周囲の人にはその理由が分からず、挙動不審にみえてしまう。
3つ目として、VRゴーグルの装着に違和感を持つユーザーの心理を安田氏は指摘した。「スマートフォンが普及すると腕時計をつけない人が増えたように、皆さん何かを身につけることが好きだと思っていないです。VR(機器)を装着するのも面倒くさい」。
普及は「かなり厳しい」
今後のPSVR2の普及について、安田氏は「かなり厳しい」とみる。VRゴーグルのように、体に装着してゲーム画面を立体視にするチャレンジは以前から存在したが、広く普及したとはいいがたい。
例えば、任天堂が発売したゴーグル型の家庭用ゲーム機周辺機器「ファミコン3Dシステム」や、同じくゴーグル型の据置型ゲーム機「バーチャルボーイ」。これらは上手くいかなかったと、安田氏は指摘する。機器を装着することなく画面を立体視できる携帯用ゲーム機「3DS」も、結果は芳しくなかった。
先述した3点の課題を解決するには、技術的な問題を根本的に改善する必要があるという。安田氏は「VR機器のようなマーケットは厳しいと考える方が妥当ではないか」と話している。