若者のキャリアの可能性を広げる上司力を鍛えよう
私と就活生とのやりとりは、ここまでです。
私たちFeelWorksが主催する「上司力研修」に参加した管理職のみなさんに、若手社員の育成課題を挙げてもらうと、次のような意見をよく聞きます。
「最近の若者は、自分が好きな仕事しかやりたがらない」
「入社して間もないのに、自分の成長やキャリアにつながらないと思う仕事には後ろ向きだ」
しかし、ひるがえって考えると、そうした近視眼的な若者を育てたのは、現在の就活の仕組み。それから、ジョブ型への移行を背景に、より明確な志望動機や役割意識を求めてきた企業など、大人の側がつくり上げた環境だといえるでしょう。
けれども、エピソードでも述べた通り、若者は可能性の塊です。
未知の仕事や人との出会いの中で、さまざまな経験やチャレンジや失敗を経ては成長していく、無限の力を秘めています。若者の希望を尊重しようとするがあまりに、逆に本人の可能性を狭めていないか。人事や上司は、顧みる必要があるのではないでしょうか。
「あなたのやりたい仕事や、目指したいことは理解した。でも、あなたの強みや持ち味と、会社のリソースや機会を掛け合わせたら、こんな活躍や成長の道もある」
「いまの仕事は希望と異なるかもしれないけれど、複数の異なる経験が力となり、あなたが究めたい道にも必ず活きてくる」
上司自身の幅広い経験や人を育てる信念をもとに、対話を深めることがあってもよいはずです。
若者が自身では気づけない持ち味を活かして可能性をさらに広げ、顧客や組織への貢献をも成し遂げられるチャンスはないか。そうした一回り大きな視点で、一人ひとりを大切に育てていく上司力が求められるのではないでしょうか。
(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)
【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。近著に、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)。