日本航空(JAL)は2024年3月21日、米ボーイング社と仏エアバス社から新型旅客機を計42機導入すると発表した。その多くを、老朽化が進む中型機のボーイング767型機の後継と位置付ける。
同じ767の後継機種でも、国際線と国内線は方向性が対照的だ。国際線は、「ポストコロナ」のインバウンド(訪日客)需要などの伸びを見据えて大型化。30年時点で事業規模を1.4倍に拡大することを目指す。国内線はコロナ禍からの需要の戻りが遅れている路線もあり、人口減も踏まえて小さい機材に切り替え、ネットワークの維持を図る。
「かなり使い込んでいる」ボーイング767型機の後継
導入する42機の内訳は国際線30機、国内線12機。国際線は27年度から6年ほどかけてエアバスの中型機「A350-900」を20機、米ボーイングの中型機「787-9」を10機導入する。国内線はエアバスの小型機「A321neo」11機を28年から導入。これに加えて、24年1月に起きた海保機との衝突事故で失った「A350-900」1機を改めて導入する。
これらの機種は、23年3月時点で国際線向け・国内線向け合わせて27機ある中型機のボーイング767-300ER型機の後継と位置付ける。767は、赤坂祐二社長の表現を借りれば「かなり使い込んでいる機材」だ。
斎藤祐二専務によると、国際線のポイントは2つ。767を「大型化して更新」することと、傘下の格安航空会社(LCC)を含めて規模の拡大を図ることだ。席数と飛行距離(キロメートル)を掛けた「座席キロ」(ASK)と呼ばれる指標で、30年に現時点の1.4倍を目指している。
767の国際線仕様には199人(ビジネスクラス24人、エコノミークラス175人)が乗れるが、後継の787-9はエコノミークラスを多く割り当てた場合、239人が乗れる(ビジネスクラス28人、プレミアムエコノミー21人、エコノミークラス190人)。JALは現時点ではA350-900を国際線で飛ばしておらず、具体的な比較はできないが、787-9よりも多くの乗客を乗せられる。
赤坂氏は
「日本のインバウンド拡大状況だとか、そういうものを見る限り、少なくとも日本発着の需要は必ずある。これから伸びていくと確信している」
と話した。
JALブランドのようなフルサービスキャリア(FSC)の国際線では、25年度の事業規模(ASKベース)は19年比で96%を見込む。「伸びしろ」が大きいとみているのがLCCだ。中長距離LCCのZIPAIRは、25年度には23年度比で1.51倍を見込む。国際線と国内線の両方を手掛け、短距離路線中心のスプリング・ジャパンとジェットスター・ジャパンは、それぞれ1.75倍、1.19倍を予想している。
国内線は路線によって回復に差、戻りきらないビジネス需要
対する国内線の事業規模は、25年度は19年比で98%を見込んでおり、国際線に比べると伸びしろが少なく、需要が頭打ちになっている状態だ。
767の国内線仕様は252人乗り、261人乗りの2種類がある。後継のA321neoはJALが初めて導入する機材だが、発表資料には「180~220席」とある。
斎藤氏によると「(2つ通路がある)767から単通路のA321neoに小型化をして需給の適合を図る」。小型化の理由を
「(「コロナ前」と比べて)需要の95%ぐらい回復しているが、若干、路線方面によって回復具合に差がある。もしくは、ビジネス需要が戻りきらないことが今後続いていく」
と説明した。将来的に生産労働人口が減少していくことにも言及した。JALでは地域との関わりを持つ「関係人口」を増やすこともうたっており、
「新しい需要を創出するとともに、ネットワークをしっかり維持していくということが極めて重要」
とも指摘。赤坂氏もこれを受ける形で、「人口減少の現象というのは、止めようがない話」と指摘した。さらに「関係人口」のあり方について
「やはり1人の人が都会に行ったり地方に行ったり、こういうことをやらない限り、地域経済社会の維持はこれから難しいと思う」
などと話した。
今回の発表とは別に、ボーイングの小型機「737-800」の後継として「737-8」21機を国内線向けに26年度から導入することが決まっている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)