二軍コーチのように、部下ひとり一人に別メニューを
――課長は、具体的に若者をどう育成すればよいでしょうか。
原義忠さん 一人ひとりを育てる徹底的なプランニング(計画立案)が重要です。
また野球の話でたとえると、プロ野球の二軍コーチになれということです。二軍コーチは選手一人ひとりに別メニューを考えます。
たとえば、二軍投手陣のレベルアップのため、全員の球のスピードを10キロ速くすることを目指すとします。
その際、いまの若者は「タイパ」を重視します。短い時間で大きな効果を上げることを望んでいます。
そこで、もともと剛速球を投げるA選手には筋力アップのトレーニングを、足腰が弱いB選手には徹底的な走り込みを、投げるフォームが硬いC選手には、やわらかいフォームへの改造をと、ひとり一人の個性に合った練習計画を立てます。
――なるほど。それこそワン・オン・ワンによって、それぞれのプランを練り上げるわけですね。ところで、会社側は課長の部下育成力を高めるためには何をすべきですか。
原義忠さん 「大過なく過ごせばいい」といったリスペクトに欠ける冷たい対応をせず、課長が「部下の育成」に前向きになれる環境づくりに努めるべきです。もっと大きな権限を与えて課長のやりがいを引き出したり、課長が自由に発言しても組織の誰からもとがめられない「心理的安全性」を保証したりすることが大切です。
課長を心理の専門職がカウンセリングして、「心理的安全性」が高いか、低いか、職場で自由にものを言えずに悩んでいるかどうか、しっかりケアしてあげることも必要です。
何より、課長が若い世代から尊敬される役職であることを示さないと、「育成効果」があがりません。時間外手当は課長には支給されないので、係長より給料が安くなる課長も少なくありません。
課長になれば給料は減る、忙しさは増す、責任は重くなる、おまけに権限があまりない。それこそ「課長=罰ゲーム」になり、課長は部下から気の毒がられているありさまです。