「役職定年制」で「終わった人」になる課長の居場所は?
――どういうことでしょうか。
原義忠さん 最近、「役職定年制」を敷く企業が増えています。課長や部長などの役職ごとに「定年」を設ける仕組みで、65歳までの雇用確保が義務化された現在、職場にシニア層が増えました。
だから、人件費を抑えると同時に組織の若返りを図るために、たとえば、課長が55歳までに部長に昇格しなければ、「上がり」として管理職から外れて「ヒラ」に降格になります。「終わった人」になるわけです。
キャリア終盤のカウントダウンが迫った課長に、会社は賃金アップやリスキリング(学び直し)の教育費負担などの投資をしません。その分の費用を若手や中堅にかけます。ただ、ハラスメント防止などの研修費はかけますが、それはチームに問題を起こしてほしくないからです。
多くの課長が役職定年後の「居場所」に困っています。それは、周囲の同僚や会社も同じように困っています。だからこそ、課長はプレイヤーとして存在価値を持ち続けたいという気持ちにもなるわけです。
――寂しい話ですね。団塊世代の私の場合、課長といえば、飲み屋に大勢の部下を連れて行き、豪快に飲んでも店から領収書をもらい、会社の経費でバンバン落としたものですが。
原義忠さん 当時は会社も、それだけ課長の役割に期待し、リスペクトしていたから交際費を出していたのです。現在では、希望退職の募集では40代~50代の課長世代がドストライクの対象に当たります。
課長は人件費のボリューム世代ですから、単価が高く、そこを削って若い人の初任給を高くして採用しようとします。投資の対象では課長は常に後回しです。また、自分に権限があり、会社から裁量を任され、高く評価されていると自信を持っている課長は4割に満たない状況です。
<やっぱり罰ゲームなのか 課長の95%はプレイングマネジャーという調査報告...なぜ?自分が活躍したいから? 産業能率大学 経営管理研究所・原義忠さんに聞く「課長の悲哀」(2)>に続きます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
原 義忠(はら・よしただ)
学校法人産業能率大学 経営管理研究所 人事・マネジメント研究センター主席研究員
人事コンサルタントとして企業・組織の人事制度設計および導入支援に従事するとともに、講師として管理職研修や評価者研修に携わる。