「まだまだ試合でプレイしたい」と思う課長
J‐CASTニュースBiz編集部は、リポートをまとめた原義忠さんに話を聞いた。
――管理職である課長の約95%が、部下と同じ業務も並行して行うプレイングマネジャーであるという点が驚きです。いまの課長自身が若い頃に思い描いた課長像とは全く違いますね。ズバリ、どうしてこんな状態になってしまったのでしょうか。
原義忠さん プレイングマネジャーとは、野球でいえば、選手兼任監督。ベンチで選手にサインを送る監督が、そのつど自分で打席に立ったり、リリーフ投手になったりするようなものです。もう忙しくて大変ですよ。
一番大きな理由は、若手から中堅社員の採用競争が激しくなり、慢性的な人手不足になったこと。その分、業務量が増えて課長クラスにしわ寄せがきています。
また、働き改革が進み、労働時間が減ったことも大きいです。しかし、生産性を下げるわけにはいかない。求められる仕事の質のレベルが、以前よりはるかに上がっているのです。
そこで、会社側は課長に目を付けます。課長に早期に抜擢されるほどの人なら有能ですから、若手よりもはるかに仕事ができる。「キミも、まだまだプレイできるじゃないか」と持ち上げるわけですね。現在、課長のプレイヤーとしての価値が向上しているのです。
――なるほど。しかし、課長自身はどう考えているのでしょうか。かつてプロ野球では、選手兼任監督には南海の野村克也、ヤクルトの古田敦也、中日の谷繁元信らがいました。もっとも、球団からはそれなりの報酬・処遇を受けていたと聞いています。
原義忠さん 課長の処遇に関しては後で詳しく述べますが、課長の心の中に分け入ると、非常に複雑です。相反する2人の自分がいます。「まだまだ試合でプレイできる(したい)課長」と、「試合で若手を育てて、マネジャーとしてキャリアを積みたい課長」です。
現実問題として、課長はベンチで選手(部下)にサインを送るより、自分がプレイしたほうがヒットを打てるし、相手打者を抑えられると思っている。それは、おそらく正しい。
実際、部下よりも強打者だし、豪速球も投げられる。当然、会社はチームの勝利を求めているわけですから、勝利を目指して自分で代打、代走までやったほうが勝てる確率が高い。
また、自分のヒットで試合に勝ったりすると、正直、部下の活躍で勝つより嬉しいものです。「まだまだ自分はやれる。もっとプレイをしたい!」と思う。それが、仕事のやりがいになってしまう。
しかし、それでは選手(部下)は育たず、いつまでたっても試合で使えない。だから、課長が試合に出ざるを得なくなり、疲弊してしまうのです。負のスパイラルに陥ってしまうわけですね。