浪人の大先輩「9浪はまい」から受験生へ 「現役か浪人か」人生の分かれ道での決断方法【インタビュー前編】

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   2024年の受験シーズンは、大詰めだ。国立大学入学試験の後期日程の入学手続第1次締切は、3月27日。となると、第1志望の国立大学に前・後期とも入れず、併願校に進学するか浪人するか悩む受験生がいるだろう。全員が必ず第1志望に進学できるわけではない。

   それでも志望校を変えず、高校卒業から9年を経て入学を果たした「浪人の大ベテラン」がいる。教育系ライターとして活躍する、濱井正吾さんだ。「現役と浪人」に関する興味深い意見を話してくれた。

(聞き手・構成/J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)

  • 9浪の末に早稲田大学に入学した濱井正吾さん
    9浪の末に早稲田大学に入学した濱井正吾さん
  • 濱井正吾さん
    濱井正吾さん
  • 9浪の末に早稲田大学に入学した濱井正吾さん
  • 濱井正吾さん

そこに入学したという事実を後悔しないなら

――濱井さんが考える「浪人すべきか、受かった大学に進学するか」の判断の分かれ目は何でしょうか。

濱井正吾さん 現時点で受かっているその大学を卒業して10年、20年たった時、そこに入学したという事実を後悔しないと自信が持てるのであれば、第1志望でなくても浪人せずに進学して良いのではないでしょうか。判断の分かれ目はここだと思います。

――思い浮かべるべき期間が、ずいぶんと長いですね!

濱井さん そうです。「不本意な入学」をすることで負うことになった学歴コンプレックスが、10年、20年後になってもまだ尾を引いているか否かを想像する。大学入学後も人生は当然続くので、その後の人生の出来事によって学歴コンプレックスが薄れて解消する可能性は、もちろんありますからね。
 要は、「不本意な入学で、自分が何年間にわたってどんな後悔をするのか」を考えるんです。「この大学に行きたい!」という「特定の大学に入学することありき」で勉強してきた人は、第1志望以外に入学すると後悔する可能性は高いと思うので、浪人した方が良いのではないでしょうか。

――濱井さんは早稲田大学に9浪してでも入学したということは、やはり「早稲田でなければ」との思いだったということでしょうか。

濱井さん もちろんです! 学部と学科はどこでも良かった。とにかく、早稲田に行きたかったんです! 特に最後の1年間はそれを強く思っていました。
 早慶戦をはじめとする大学対抗のスポーツがテレビなどで報じられ、それを観戦する早大生が「紺碧の空」を歌う姿などから伝わってくる楽し気な雰囲気が、たまりませんでした。

――あくまで私の個人的な感覚ですが、「早稲田に行きたい!」でも「学部はどこでもいい」と思っている人は多いように感じます。

濱井さん 同感です! 何でしょうね。受験生って、とかく、「就職活動に有利だから」「ゼミが充実しているから」といった理由を述べつつ「○○大学に行きたいです!」と進路指導の時に話しますが、早稲田が第1志望の人は本当の志望動機って「何だか、雰囲気が楽しげだから」といったもののような気がするんですよね。

宅浪、仮面浪人どう考える

――浪人中きちんと勉強していたのに、再度第1志望に落ちる例はよく聞きます。それは、本人の勉強法がまずかったという原因が考えられます。浪人中に自分の勉強法が正しいか否かを自己チェックする方法はありますか。

濱井さん 基本的には、難しいと思います。他の受験生に聞いてみるか、模擬試験の結果を読み込んで、自分に何が足りないかを分析することですね。特に後者は、第1志望に受かった受験生は口をそろえて言います。ただ、自分を律することが出来て、かつ、すでにそれなりの偏差値がある受験生でないと難しいでしょう。

――自己チェックが難しいなら、本気で第1志望に入りたい人は自宅浪人、通称「宅浪」はやめた方が良いでしょうか。

濱井さん そうですね。本当に自分を制御できる人でないと難しいと思います。予備校に行くと相当額のお金がかかりますが、テキストや先生・チューターの方々のご経験にはそれまでの受験指導で培われたノウハウが詰め込まれていますので、自然と正しい勉強法に導いてくれると思います。

――「仮面浪人」というものもあります。純粋に浪人するのと仮面浪人、どちらがより第1志望に受かりやすでしょうか。

濱井さん 純粋浪人ですかね。やはり、「学生の地位をとりあえず確保する」よりも勉強に身が入るでしょう。どうしても仮面浪人するのであれば、「欲張らない」ことです。

――と、言いますと?

濱井さん 仮面浪人は純粋浪人に比べて、勉強の際に必死さを保つことが難しい。私が行っていた予備校の仲間たちを見ると、学力は、「試験を受けていた時の実力のワンランク上」までしか伸びないことが多いように思います。大学受験では「日東駒専」「GMARCH」「早慶上理」といった言い回しが多いですが、仮面浪人で狙えるのは、自分がとりあえず入学した大学のワンランク上までに感じます。

――濱井さんが考える、浪人中のモチベーションの維持方法って何でしょうか。

濱井さん 受験勉強における短期的な目標を立てる。これを知ったのは、9浪目に勉強していた塾ですが、勉強のスケジュールが1週間単位で、「ここまで到達しよう」という目標が受験科目全てに立てられています。短期間だと、勉強がはかどるんですよ。1週間単位の勉強をがむしゃらに繰り返すという形で、学力が伸びたと思います。

浪人生活にピリオドを打つ決め手

――浪人生活の一番分かりやすい引き際は、「金銭的に続かない」だと思います。でも、それ以外だと、浪人生活を断念して「不本意入学」するのは今一つ決定打がないように思います。浪人生活にピリオドを打つのは、何でしょうか。

濱井さん 第1志望に入るという目標を達成するのは、確かに重要です。ただ、再び合格できなかった場合に備えて「自分なりの落としどころ」はどこなのか、常に意識しておく必要があります。

――1年かけても目標が達成できない可能性があるわけですからね。

濱井さん 浪人生活には、リスクヘッジの発想も必要だと思います。ただ、その落としどころを決める際に、「周囲からの視線」は排除すべき。具体的には、親族から浴びせられる「このレベルの大学にしか行けないのか」といった雑音です。判断基準はあくまで「自分がどうしたいか」です。「この大学では親族に対して恥ずかしい」といった思いを抱くことも、禁物です。どちらの状況も「周囲のために生きる」という状態になっているので、その状況で浪人するのは「自分の人生」にならないからです。
 その上で、「自分がやり切ったか否か」で考えるのが良い。第1志望ではない以上、後悔は発生するでしょうが、同時に、人生は有限ですからね。(後半に続く)


【プロフィール】
濱井正吾(はまい・しょうご)
自称浪人専門家。1990年11月11日生まれ。兵庫県出身。高校卒業後9浪を経て2018年に早稲田大学教育学部国語国文学科入学。2022年に卒業。現在は教育系ライターとして活動する傍ら、大学院浪人として入学を目指す。

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