社員を動機づけ育てる心構えのない人は、リーダーに登用しない!
前川 少し話が前後しますが、リーダーやマネジャーの登用・配置や、部下マネジメント上の課題にはどのようなものがありますか。
永井さん マネジメントは、登用されてから学ぶ部分もあります。ですが、やはり人生経験やいろいろな人に触れた経験が、クオリティに影響してくると思います。
まだ若くて未熟であると、マネジメントが画一的になったり、相手のタイプを見ずに自分のやり方を押し付けてしまったりしがちです。そのうえ、自分より年上の人をマネジメントする機会も多いので、そこでつまづいてしまうこともあります。
前川 そこは、どのようなフォローをしていますか。
永井さん 経験による学習が大事とはいえ、あらかじめマネジメントのティップスや先輩たちの経験を伝えるようにはしています。
具体的には、内製したEラーニング教材で学んでもらうほか、部署横断の社員全員対象の研修で「しくじり先生」ではないですが、先輩マネジャーの失敗談を語ってもらっています。
また、リーダーやマネジャーの登用の際にはアセスメントを行い、事業責任者との面接も行い、基準に達しなければ必要な人数枠に満たなくても登用はせず、なぜ不合格かを本人にはきちんとフィードバックしています。
前川 アセスメントの基準はどのようなものですか。
永井さん リーダー登用の場合には、大きくは3点あります。
1つは、目標達成に向けてPDCAサイクルをきちんと回せるかどうか。
第2に、メンバーを動機づけすることができるか。
第3に、誠実に人と向き合えるかどうか。
その3つが満遍なくあることが合格の基準です。ですから、PDCAを回すことがいくら上手でも、人に関心がなく育成する気がないという人は登用しません。
とはいえ、リーダーの兼任がとても増えていて、一部の人に負担が偏っている状態は組織として不健全です。何とか育成に努めなければと考えてはいます。
前川 人に関心を持ち、育成するマインドを持つ上司を増やすことは組織の持続成長の根幹です、ところが、プレイヤーとして仕事ができることとは別次元なので一筋縄にはいきませんよね。そのようなケースではどうやって育てているのですか。
永井さん 研修も大事ですが、それだけでは解決できません。
なので、各事業部で毎週行う1on1ミーティングで、上司からリーダー本人に、なぜメンバーとのコミュニケーションが大事なのかを伝え続けてもらいます。
リーダーになる前のプレリーダーの立場でマネジメントを任せる方法もあるので、実際に一度苦労してもらうのもひとつです。きちんと人の動機づけができないと、チームのPDCAも回らないことを実際に学ぶことで、大切さを知ってもらうわけです。
前川 工夫されていますね。
永井さん マネジメントの悩みとして、メンバーにどの程度厳しく言っていいものか、フィードバックはどこまではっきり伝えるべきかといった相談を受けることがあります。
それに対しては、評価の基準をきちんと相手に伝えることが大事だと話します。
相手に厳しく言うのは基準との関係で評価し伝えているのであって、基準を示さず注意することはよくないと、フィードバックの基本型をアドバイスしています。その際、怒鳴ったり、高圧的な態度になったりするのはいけないとも伝えますね。
前川 ハラスメント予防への留意も大切ですね。