石川県金沢市の三谷産業が、2024年4月1日から「週休3日制」を導入する。1週間の労働日数が5日から4日に減少する場合、給与も20%減となるケースがあるが、この会社の場合は給与額が維持される。
週の休みが1日増えて、給与も変わらない。夢のような働き方のようにも思えるが、どんな制度になっているのだろうか。同社のPR企画室に話を聞いた。
自社が考える「良い会社」であり続ける取り組み
三谷産業は1928年に石炭の卸売をする会社として創業された歴史ある商社だ。現在は北陸、首都圏、ベトナムを拠点に、化学品、樹脂・エレクトロニクス、情報システムなど6つの分野で、約5000社の顧客とビジネスを展開している。
東証スタンダード市場に上場し、2023年3月期の連結売上高は904億円。連結従業員数は3500人を超える。自社が考える「良い会社」であり続けるために、独自の非財務的経営指標「Company Well-being Index」を設けて、取り組みを行っている。
「当社の経営指標のひとつに"ホワイト企業度"があり、従業員一人あたりの月の平均残業時間や育児休業取得率、社員の定着率など独自の目標を立てています。例えば、男性の育児休業取得率は2022年度実績で59%でしたが、2023年度には100%にする目標を立てています」(PR企画室。以下同じ)
育休の具体的な取得促進策として、制度説明パンフレットを作成したという。そして、本人と上司、人事の三者面談を早めの段階で行って育児休暇の計画を立てることなどにより、男性社員でも取得しやすい・させやすい環境を整えている。
今回の週休3日制も「良い会社」を目指した取り組みの一貫だ。なお、対象者は「小学校卒業までの子を養育する社員」「要介護状態にある家族を持つ社員」「病気の治療を受けている社員」「満60歳以上の社員」となっている。
会社の考え「働き続けられる人がより増えるのではないか」
なぜこのような社員が対象になるのか。通常の「週5日・1日8時間」を基本とした働き方が難しい人たちと判断したのだろうか。
「そのように断言するものではありませんが、ライフスタイルの変容に合わせて、週休3日制が選択肢のひとつとしてあれば、働き続けられる人がより増えるのではないかと考え、対象者を決めております。なお、当社の1日の勤務時間は、本制度導入以前より7.5時間勤務となっております」
今回の制度の導入にあたり、三谷産業ではさまざまな企業や国の施策を参考にしたとのこと。一般に「週休3日制」には、以下の3つのパターンがあるとされる。
1つ目は、総労働時間が減っても給与が変わらない「給与維持型」。2つ目は、休日の増加とともに総労働時間が減って給与も下がる「給与減額型」。3つ目は、総労働時間と給与のどちらも変わらない「総労働時間維持型」だ。
「給与維持型」は実質的な増額となるため、働く人たちからは当然これを期待する声が多い。「給与減額型」にはネガティブな意見が多い一方で、「給与が減ってもいいから、とにかく休みを増やしてほしい、休みたい」という人もいる。
三谷産業は「総労働時間維持型」で、週の総労働時間は37時間30分で週休2日制と同様。現在国家公務員を対象に可能とされている「選択式週休3日制」に近い内容となっている(国家一般職の週の総労働時間は38時間45分)。
勤務時間法では、育児や介護等の事情がある職員のみ、フレックスタイム制の活用により勤務時間の総量を維持した上で、週1日を限度に「勤務時間を割り振らない日」を設定することを可能にしている。対象者も、三谷産業の制度に近い。
対象者を今後拡大する可能性はある?
なお、2023年8月の「令和5年人事院勧告」では、選択式週休3日制について「現在、育児介護等職員に認められている措置を、一般の職員に拡大」するよう勧告されており、2025年4月1日から施行される予定だ。
三谷産業でも、今後対象者を拡大する可能性はあるのだろうか。
「その点については、新しい制度を実際に運営しながら社員の声を聞き、より充実した制度へ更新していく可能性はございます」