威圧感が強いシニアと、気が弱い若手をペアにしない
――「リバースメンタリング」を導入するには、どういった点に気をつける必要がありますか。
福澤涼子さん 若手は経験が浅いため、教えることに慣れていません。特に経営幹部に教えるとなると、大変なプレッシャーになります。幹部1人に若手2人をつけるという事例もあります。また、ミドルシニアの中には「若造に教わるなんて、俺は嫌だ」という人もいるでしょう。
若い人が自信を失うと意味がないので、威圧感が強いミドルシニアと気が弱い若手をペアにしないとか、マッチングに配慮しましょう。また、事前の研修で「互いを尊重して学び合おう」「感謝を伝えましょう」などと、主旨や臨む姿勢を徹底させることも重要です。
――「リバースメンタリング」の目的は、主に経営幹部がイノベーションのヒントにすることにありますね。せっかくいい取り組みなのだから、一般のミドルシニア層と若手層の間に広げたらどうですか。
福澤涼子さん 私もそう思います。世界保健機関(WHO)が2021年に出した報告書によると、「年寄りは使えない」「若者は甘ったれている」といった「年齢差別」(エイジズム)の感情は、世界中で2人に1人が持っているといわれます。
こうした世代間を対立させるエイジズムは、交流頻度の少なさが偏見を招く要因の1つです。役職に上下は必要でも「学びに上下はいらない」と私は考えています。定年延長でシニア層が職場に増えているいま、リバースメンタリングの相手を年長者全員に広げて、お互いにフラットに学び合うようにすると、職場の雰囲気もぐっと明るくなるはずです。