「教えてくれてありがとう!」と感謝の言葉を伝える
――ミドルシニア層が若い世代から学ぼうとするには、どういう姿勢、心構えが必要でしょうか。たとえば、団塊の世代の私が職場の20代のA君に教えを請う時はどういう配慮が必要ですか。
福澤涼子さん まず、自分は学び直しをしないと、取り残されるリスクがあるということを謙虚に理解することです。「アンラーニング」(Unlearning)という言葉があります。日本語では「学習棄却」や「学びほぐし」と訳されますが、いったん、これまで身につけたことを忘れ去る覚悟で新しい学びに挑戦しましょう。
一方で、Aさんには寛容の心で接することも大事です。AさんがITなど一部の技術に長けているとはいえ、あなたより総合的に優れているとは限りません。経験的に至らない面には目をつむり、お説教などしないで、素直にAさんの優れたスキルに目を向けるといいでしょう。
――それは私にもできると思います。
福澤涼子さん そして、何より大切なことは「A君、教えてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えることです。日本の若者はほかの国の若者に比べ、自分を肯定する「自尊心」が非常に低いという研究があります。特に日本では、その自尊心には自分が社会や周囲に役に立っているかどうかを重視する「他者に対する有用感」がカギになります。
ぜひ、職場のみんなの前で「A君に教わって助かったよ。みんなもA君に教わるといいよ」と言ってあげてください。Aさんの励みにもなるのではないでしょうか。
<企業で始まった若手が年長者を教育する「リバースメンタリング」 なぜウィンウィンな制度なのか(2)/第一生命経済研究所・福澤涼子さん>に続きます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
福澤 涼子(ふくざわ・りょうこ)
第一生命経済研究所ライフデザイン研究部研究員、慶応義塾大学SFC研究所上席所員
2011年立命館大学産業社会学部卒、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)入社、2020年慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、同大学SFC研究所入所、2020年リアルミー入社、2022年第一生命経済研究所入社。
研究分野:育児、家族、住まい(特にシェアハウス)、ワーキングマザーの雇用。最近の研究テーマは、シェアハウスでの育児、ママ友・パパ友などの育児ネットワークなど。5歳の娘の母として子育てと仕事に奮闘中。