エンゲージメント向上には、非金銭的報酬を重視
前川 若者の採用難や早期離職への対応として、初任給を上げて年功型賃金を改めるほか、労働時間を減らし、休暇・休業の取得促進や働き方を柔軟にするなど、多くの企業では労働条件面での改善に躍起です。
しかし御社は、もちろん業界第1位を目指すことで利益を社員にも還元する基本方針はありながらも、賃金や労働条件面を前面に掲げるよりも、社員に成長の機会を与えることや、社員間のコミュニケーションやネットワークづくりなどの広報に力を入れているように感じます。
そのあたりは、意識的に行っているのですか?
永井さん いわゆる金銭的報酬と非金銭的報酬の区分でいえば、後者にフォーカスを当てて考え、社員の皆さんのエンゲージメントを高めていこうとしていることは確かですね。
金銭的報酬は衛生要因ですので、改善して満足を得ても、しばらくすると不満に変わりやすい。なので、成長機会やよいコミュニケーション環境のような非金銭的報酬のほうが、永続性があると考えています。
前川 まったく同感です。まさに衛生要因ではなく動機づけ要因に着目して、人を採用し活躍に至っている実証企業ともいえて、素晴らしいですね。インフォーマル・コミュニケーションの活性化については、レバカツ以外にどのような施策がありますか。
永井さん たとえば、部署横断の誰でも参加できる勉強会がありますし、年2回のクリスマス会などのシーズナルイベントも行っています。各種研修後の懇親会での交流などもありますね。ちょっとくだけた内容の、紙媒体の社内報を4半期に1回発行しています。
前川 これもITの会社とは思えない! アナログですね(笑)。その社内報は、どんな企画なのですか。
永井さん 最近のものでは、組織も大きくなってきたので、経営ボードに光を当てようと、部長ラインが登場する特集を組みました。
今年の弊社のスローガンが「史上最速」。それにちなんで、部長たちに、よみうりランドに行ってもらい、ゴーカートで誰が一番早いかを競ってもらいました。
また、10月頃に部長たちに集まってもらいクリスマス料理を作ってもらって、「史上最速のクリスマスパーティー」をやりました。30分以内で作ってくださいと頼み、普段料理をしない事業部長が生煮えの肉料理を出してきたり(笑)。
ちょっと面白おかしく、でも部長のみなさんの人柄や考えなどがわかりやすい内容にしてみました。私たちと広報担当がタッグを組んで、一緒に笑いながら企画をしました(笑)。
前川 いやあ、楽しそうでいいですね。遊び心って、ハードな仕事をするからこそ、とても大事だと思うんです。
働くうえではシビアでつらいことや困難なこともあるけれど、こうして楽観的にとらえて仕事を楽しむ風土があるから乗り越えられる面もありますよね。緊張して取り組んでいると、萎縮してしまったり、失敗を恐れたりしがちですが、明るく大らかな風土だとメンバーも安心してチャレンジできますよね。ここにも、御社が急成長している源泉があると確信しました。
3月21日公開予定の<GPTW Japan「働きがいある大企業」若手部門1位の秘訣は レバレジーズ、時代と逆行する「昭和」な職場にあった?【インタビュー】>に続く。
【プロフィール】
永井 遥佳(ながい・はるか):レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー/2017年に組織人事コンサルティング会社に新卒入社。大手企業向けのコンサルティング部門で、コンサルタントやHRテックのカスタマーサクセス等を経験。2020年7月にレバレジーズに入社し、2021年から現職。グループ会社全体の人材育成と組織開発を担う。新入社員・リーダー・マネジャー育成の他、チームビルディングワークの設計・運営、社内公式部活動「レバカツ」の導入も担当。
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授/人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。近著に、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。