経験を成長の起点に、自己学習サイクルを回す
前川 社員の活躍支援や、人材育成の基本的な考え方には、指針などありますか。
永井さん 弊社の人材育成ポリシーは、「社員が経験を成長の起点として、経験学習サイクルを自ら回していくことを支援すること」としています。
弊社の特徴として、社内に幅広い事業があり、オールインハウス体制で多様な職種が働いており、互いに幅広いプロジェクトに参加する機会もあります。
前川 詳しく教えてください。
永井さん たとえば、営業職がシステム開発の上流工程検討のプロジェクトにチャレンジするなどです。また、自ら新しい仕事を取りに行けたり、年齢に関わらず力があればマネジメントも担ええたりできる。そんな風土があります。つまり、自ら経験を広げたり、磨けたりすることが弊社らしさでもあるのです。
よく言われる「7対2対1の法則」で、人の成長は7割が経験からの学びによるとされますから、この点を重視します。
ただし、単に経験を繰り返すだけでは、底の浅い人間になってしまいます。きちんと経験を内省する機会をつくり、不足する知識や技術は研修で学べる機会を提供し、学習サイクルを回していくことが大切です。
前川 御社は、社員の平均年齢が27歳。20代でリーダーやマネジャーに抜擢される組織風土や仕組みがあります。思えば私は前職のリクルートに1989年(平成元年)に入社し、30数年前の当時は20代でマネジメントを担うことが当たり前でしたので、懐かしさを感じます。
しかし、現在の日本は高年齢化が進んでいます。そう考えると、20代でそうした機会が得られる大企業は稀です。そうした中で、御社の20代のチャレンジや抜擢の文化を、どのように見ていますか。
永井さん 実は、私は中途入社で、前職では人材コンサルティングの仕事で大企業の支援もしていました。この会社に入った当初は、入社1年目でリーダーになったり、2年目で事業責任者になったりするなんて「本当に大丈夫?!」と、疑っていましたね(笑)。
でも、抜擢されたメンバーたちは、自分の役割を認識し、職責を全うしようとがむしゃらに努力します。マネジメントの質などに課題はありますが、何とか成り立ってはいるのです。抜擢の力を感じますね。
前川 人は機会があると成長することを、実感されているのですね。
永井さん はい。ただ、その土台には本人の中にしっかりしたマインドが不可欠です。採用の時点で、仲間になっていただく方には、対話の中で徹底して確認していきます。成長意欲や上昇志向があるか、少々ハードな局面でも乗り越える熱量を注げるか、といった点です。
前川 入社時にマインドをしっかり見極めることが大切なのですね。そうした若者を多数採用されるところも興味深いと思いました。
私自身は型にはめる見方を好みませんが、いま世間的には「Z世代の若者は、目立ちたがらず、上昇意欲がない」などと言われがちです。御社にはそれとは真逆とも思えるような、チャレンジを好む若者が入ってくる。Z世代の若者を面接して、気づいたことなどありますか。
永井さん 採用面接では、かつてよく聞かれた「部活でこれだけ頑張りました!」「クラスでは〇〇で活躍しました」などの自己PRのエピソードは減ったかもしれません。
話を聞いていくと、「ウェブマーケットでこんなことをした」「ライブ配信で投げ銭をこれだけもらった」(笑)といったエピソードに出合います。ただ、テーマは変われど、みんな行動はしている...そういう点では、結局、基本は変わらないように思います。
前川 なるほど。しかも、そうした若者が実際に入社し、機会を与えられるとがむしゃらにチャレンジして結果を残しているわけですからね。それにしても、御社にそうした若者が多く集まってくるのは、他の会社とは何が違うからだと思いますか。