ラム肉の情報を発信する「ラムバサダー」の調査によると2021年、羊肉料理を出す店は東京都で179店、神奈川県は36店あるという。羊肉と言えば、国内では北海道が思いつくが、関東近郊でも一定の人気のようだ。
しかし、この20年間で羊肉の価格は3倍以上にも値上がりしたという報道がある。このまま価格上昇が続くと、高級肉になりかねない。オーストラリアにある牛肉・羊肉の生産者団体「MLA」(ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア)の三橋一法氏を取材し、将来を占ってもらった。
20年以上前は「マトン」が主流
J-CASTニュースの2014年9月6日付記事は、タレ漬けジンギスカン製造やレストランを手掛ける「松尾ジンギスカン」の値上げを取り上げていた。タレ漬けジンギスカン500グラムを617円から860円にしたという。
2024年の現在と比較してみよう。松尾ジンギスカンのオンライン販売では、タレ漬けジンギスカン1キログラムで2400円。500グラムに単純換算しても1.3倍の価格になっている。
松尾ジンギスカン銀座店のメニュー表では、ラムリブロースジンギスカン(野菜付)は一人前2980円、ラムジンギスカンは一人前1980円(野菜付き)、骨付塩ラムステーキは1本1500円。一人前の量にもよるが、決して安い値段ではない。
気になるのは、この20年間で羊肉の値段が3倍になっているという先述した報道だ。三橋一法氏を取材すると、こんな答えが返って来た。
「20年以上前に日本でよく食べられていた羊肉は、羊毛を刈ったあとのマトンが主流でした。また、欧米では人気が低かった肩肉(ショルダー)が安価で手に入っていたのも安く流通していた要因かと思います」。
今日、日本でも主流になっているのは、世界的に需要が高いラム肉(子羊)。「世界的な価格競争によって値段が上がっているように感じているのでしょう」と指摘した。
中国、米国、韓国、東南アジアで需要増
2020年以降のラム肉の出荷量について、三橋氏は、「パンデミックの影響で人手不足が深刻化し、オーストラリア現地の生産稼働率が激減したことで需要と供給のバランスが崩れました。中国や米国をはじめ、以前は需要がなかったがここ数年は日本の1.5倍の輸入量に増加している韓国や、東南アジアからの羊肉の需要が年々増えていることが近年の価格競争に影響していると言えます」と言う。
「飲食店が仕入れるラム肉の価格はこれ以上値上げすることは考えにくいでしょう。高過ぎるとどの市場も買わなくなるからです。逆にこれからは、日本人やインバウンド観光客が積極的にラム肉を消費することで、輸入量が増えて結果的に価格が下がる可能性は十分にあると考えます」
このように説明した。