男子ゴルフの海外メジャー「全英オープン」のテレビ中継から、放送局のテレビ朝日が撤退する。2024年3月13日にスポーツニッポンなどが報じた。1982年から昨年まで42年間にわたって放送も、巨額の放映権が痛手となったと記事では説明している。
ゴルフに限らず、近年は海外スポーツの放映権の高騰ぶりが報じられることが多い。もしかしたら、米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が出場する試合も見られなくなる日が来るのだろうか。
W杯予選「日本×シリア」放送されず
「地上波放送なし」で記憶に新しいのは、2024年1~2月のサッカーアジア杯カタール大会だ。日本代表の試合は5試合中3試合で、テレビ中継されなかった。不運にも、放送された2試合とも黒星で、日本はベスト8で敗退した。
サッカーの国際大会では、23年11月21日に行われた、2026年W杯アジア2次予選のB組第2戦「日本×シリア」も、地上波はおろかインターネットでの有料配信もなし。放送権料などの条件で折り合わなかったのだ。
日本人選手が活躍する大リーグ中継は大丈夫か。中日スポーツ(電子版)は2023年12月25日、大リーグの放映権について報じた。「日本とは放映権料に格段の違いがあり、日本は米国の10分の1とも言われる」という。
今後、国際スポーツイベントの地上波放送が、放映権の問題で中止の危機にさらされる事態になるのか。米国経済やITに詳しいジャーナリスト・岩田太郎氏に意見を求めた。
放映権は米国でも高騰
岩田氏は「スポーツ放映権は日本向けに限らず米国でも高騰しており、新たな解決策が模索されている状況です」と指摘した。では、大谷選手の試合中継はどうなるだろう。
「現時点では日本で大谷フィーバーが続いており、この超人気ぶりが続く限り、民放テレビ各局がNHKのBS放送と並列で巨額の放映権料を投じて、ドジャース公式戦の地上波中継を生中継する価値は大いにあります」
大谷選手ほどの「キラーコンテンツ」は、他に数えるほどしかない。「この先少なくとも数年は、放映権料が高くても(テレビ局は)喜んで支払うのではないでしょうか」というのが、岩田氏の見解だ。
大谷選手の試合が地上波で見られなくなるか否かは、日本のテレビ局の「懐事情」が関係してきそうだ。「『放映権料という投資が視聴率と広告料というリターンに見合うか』を、どのように考えるかにかかっています」。
体力のない放送局が脱落しても不思議ではない
岩田氏は仮定の話としつつ、米国で「ドル高を好まないトランプ前大統領が返り咲けば、円安が円高に転じて日本の放送局は放映権料支払いに少し余裕が出るかもしれません」という。だが、こうも語った。
「2024年の米スポーツ放映権料は624億ドル(約9兆2282億円)に達すると予測されます。2年前は550億ドル(約8兆1336億円)でしたので、まさに『うなぎのぼり』です。日本向けの放映権が、この傾向の影響から逃れることは難しいでしょう」
こうなると、大谷選手の試合放映をめぐる競争から、いずれは体力のない放送局が脱落しても不思議ではないと指摘した。
こうした淘汰が進んだ場合のシナリオとして、岩田氏は米国で進行する「地上波のスポーツコンテンツが徐々に動画ストリーミングに移る傾向」を例に、次のように話した。
「日本でも、いつか大谷選手の試合が動画サブスクや、DAZNなどのビデオ・オン・デマンド・サービスで見るようになるかもしれません」
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)