2024年3月8日の産経新聞によれば、会合は23年11月18日に和歌山市内の「ホテルアバローム紀の国」で開かれた「青年局近畿ブロック会議」で、党本部青年局の国会議員や近畿2府4県の若手地方議員、党関係者など約50人が参加した。女性ダンサーが登場した会議後の懇親会にもほぼ同数が参加し、内容を紹介するのも憚れるような不適切な行為が行われた。この会に参加していた党の青年局長である藤原崇衆院議員や局長代理の中曽根康隆衆院議員は、すぐに党青年局の職を辞した。
政治にはカネがかかるというが...
なぜ23年11月のものが今になって出てきたのかの真相はわからない。週刊誌でなく産経新聞から出たというのは、自民党内の保守系の良心からのリークなのかもしれない。
いずれにしても、これは、今の自民党の分かりやすい縮図といわれても仕方ない。
「政治とカネ」が問題になっている。政治にはカネがかかるというが、こんな懇親会をやっていればかかるだろう。相手がいるので領収書が出せないというが、流石にこの懇親会の内容を記した領収書は出せないだろう、といわれたら、二の句が出ないだろう。
もっとも岸田文雄首相は、参加費について参加者の会費で賄われており公費は使用していないと3月13日の国会で答弁している。カネに色は付いていないとはいえ、参加者がどこまで個人と政治団体を区分しているのか、気になるところだ。
セキュリティ・クリアランス法案、政府高官とハニートラップは審査しなくていいのか
しかも、今国会に提出したセキュリティ・クリアランス法案での問題点も、この懇親会をみると分かる。
この法案は、10年前の特定機密保護法のアップグレードだ。同法では対象が、国防、外交、スパイ、テロに限定されていたが、それを経済安全保障などの一般の秘密まで拡大する。そこまではいいが、同法の適格者として抜けていた政府高官や審査項目のハニートラップ(ハニトラ)は依然として抜けたままだ。
この懇親会に出ていた党青年局幹部はいずれ政府高官になるが、ハニトラ審査には引っかかるだろう。だがら、政府高官とハニトラを除外したのかといわれたら、どのように言い訳するのだろうか。
今回の不祥事が、「雨降って地固まる」となり政治資金規正法改正やセキュリティ・クリアランス法案の修正にまでつながるか、それとも自民党支持率がさらに低下して自民党崩壊状態になるのかはわからない。
和歌山という地方での独特の会合ともいえるが、女性ダンサーを多様性の問題提起のために呼んだとか、閣僚が多様性の問題とか、的外れなコメントも、今の自民党らしい。
挙げ句の果てには、青年局長を女性にすればいいとばかりに、新青年局長に、鈴木貴子氏を起用した。一体自民はどうなっているのか、呆れてしまうばかりだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。