「本屋」が消えていく! 10年間で764社...「コロナ特需」「鬼滅の刃ブーム」去った後、復活の道は 調査担当者に聞く

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   全国の市町村から「本屋」が消えていく。

   東京商工リサーチが2024年3月10日に発表したリポート「『書店』10年間で764社が倒産や廃業で消えた」によると、「コロナ特需」でなんとか踏みとどまっていた書店の倒産・廃業が再び上昇に転じている。

   「街の本屋さん」に復活の道はあるのか。調査担当者に聞いた。

  • 書店を楽しもう
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  • (図表)書店の倒産、休廃業などの推移(東京商工リサーチ作成)
    (図表)書店の倒産、休廃業などの推移(東京商工リサーチ作成)
  • 東京都内のオシャレな書店
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  • 書店の本棚
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  • 『ONE PIECE』3週休載の発表があった(写真はイメージ)
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経産省が「書店振興プロジェクトチーム」開始

   ネット通販や電子書籍の普及などを背景に全国的に書店が減少する中、経済産業省は2024年3月5日、「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げると発表した。

   同省公式サイトによると、齋藤健経産相は、記者会見で「書店は、日本人の教養を高める重要な基盤で、書店に出かけることで新しい発見があり視野も広がる」と述べた。

   今後、書店の経営者を呼んで経営上の課題の意見交換を行ない、本を読めるカフェやイベントスペースを併設した工夫事例などを聞き取るという。同省によると、現在、全国の市町村のうち、書店がない自治体は約4分の1に上る。

   東京商工リサーチの調査によると、書店運営会社(書店)の市場退出が止まらない。

   2014年以降、書店は倒産・休廃業が新設法人を上回る状態が続き、10年間で764社が市場から退出した。店舗数の減少も続いている【図表】。

   書店の倒産(負債1000万円以上)は、2014年から2023年の10年間で140社に及ぶ。

   ピークの2016年の25社発生。2016年は、出版取次大手の「太洋社」(東京都千代田区)が破産を申請。連鎖する形で18社の書店が、次々と倒産や廃業に追い込まれた。

   その後、書店の倒産は一進一退が続き、コロナ禍では資金繰り支援や巣ごもり需要もあって、倒産は減少に転じた。ところが、支援が縮小したうえ、「コロナ特需」が一巡した2023年は一気に13社と2.6倍に急増した。

   こうしたことから、東京商工リサーチでは、

「電子書籍が浸透し、書店の存在が揺らいでいる。店舗で目当ての本を探す楽しみや、知らない本との出会いも、書店の減少で失われつつある。書店の復活には『待ちの営業』から客足を向かせる創意工夫への転換と同時に、国や出版社の継続的な支援が必要だ」

と結んでいる。

話題作『推し、燃ゆ』『52ヘルツのクジラたち』で文芸書もブームに

   J‐CASTニュースBiz編集部は、リポートをまとめた東京商工リサーチ情報本部の調査担当者の話を聞いた。

――書店の減少が加速している原因は何でしょうか。リポートには、ネット書店や電子書籍に押されたとありますが、たとえばAmazon(アマゾン)などの通販、BOOKOFFなどの中古書店の台頭なども考えられないでしょうか。

調査担当者 大きな流れは、「本離れ」だと思います。本や雑誌、漫画の電子化、アマゾンなどの通販も気軽に利用でき、書店に行かなくても書籍を購入できるようになり、習慣化されました。

また、書店経営の側からいえば、光熱費や人件費の高騰によるコスト増も重く、また、万引きの横行も負担になっていると聞いています。

――コロナ期間中は、減少に歯止めがかかっていたのはなぜでしょうか。

調査担当者 コロナ禍では、経営不振の書店でも資金繰り支援策を受けられたため、倒産も廃業も減少したと考えられます。また、ちょうど「鬼滅の刃」ブームが起こり、原作本が500万部を突破するなど、おおいに売れたことも大きいです。

コロナ禍の巣ごもり需要で、好転した書店も多かったようです。「出版科学研究所」によると、2021年の紙の書籍の販売総額が前年比2.1%増の6804億円と、15年ぶりにプラスに転じました。

たとえば、子どもたちが読む絵本、図鑑、学習漫画などの児童書が絶好調で同4%増でした。文芸書も同3%増で、芥川賞を受けた宇佐見りんさん(当時21歳)の『推し、燃ゆ』が50万部を突破し、本屋大賞に輝いた町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』も累計発行部数100万部を記録するなど話題作が売れました。

芥川賞作品がこれほど売れた例は珍しいし、また、『52ヘルツのクジラたち』は現在、映画化されています。

「来店したくなる店作り」&「どんどん書店に行こう」

――なるほど。しかし、「コロナ特需」が去った現在は大変ですね。書店の復活には、「待ちの営業」から「客足を向かわせる創意工夫が大事だ」と指摘していますが、具体的にはどういうことでしょうか。

調査担当者 いままでと同じように顧客を待っているだけでは、来店者数の回復は見込めません。大型店やネット書店との差別化が必要で、その店舗のニーズを汲み取り、本棚の配置を工夫して関連本を見やすくしたり、意外な本の発見につながったりするなど、来店したくなるような店作りが重要です。

また、スペースがあるなら地域の需要を見ながら、文房具を充実させたり、気軽に本を読めるカフェなどを併設したりすることも来店数増につながると思います。リアル店舗の強さを引き出せれば、ネット書店と勝負ができます。

――国や出版社の継続的な支援が必要だ、と指摘されていますが、具体的にはどういう支援、今後の対策が必要だと考えていますか。

調査担当者 経済産業省がプロジェクトチームを立ち上げて、本格的な支援が始まります。人口減やネット書店との競合が今後も続きますので、書店経営のコスト削減支援や、集客のためのイベント、カフェ運営などの取り組みに支援が必要となっています。

また、経営者の後継者問題もあると思いますので、書店を残すための事業承継支援も必要ではないかと思います。

このまま何も変わらなければ、現在、全国の4分の1という書店ゼロの地域が増えてしまいます。経産省などの支援とともに、皆さんが近隣の書店に足を運んで、新しい本に出会える機会が増えれば、書店存続につながると思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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