3月、プロ野球の2024年シーズンがいよいよ開幕する。優勝チームはどこか。歴史に残る大記録は生まれるか。球場に行くこと、それ自体もファンにとっては楽しみだ。
そんななか、選手たちの「熱き」プレーを、誰よりも楽しみにしている人たちがいる。
横浜DeNAベイスターズ・オーナーの南場智子(なんば・ともこ)さん。
そして、電機メーカーのハイセンスジャパン社長・李 文麗(り・ぶんれい)さん。
ハイセンスジャパンは昨シーズンから、横浜DeNAベイスターズを支えるスポンサーとなり、「横浜スタジアム」で行われるイベントを盛り上げていることをご存じだろうか。
今回、スポーツを軸に協力する2人が、2月におこなわれた横浜DeNAベイスターズの沖縄キャンプを視察。そして、現地で「スポーツビジネス」をテーマに、J-CASTニュースBizの独占対談が実現した。
2人のスポーツへの思いとは――。
(聞き手・構成/経済ジャーナリスト 浦上早苗)
(写真/ハイセンス・ジャパン 石橋和之)
もし別の球団だったら「南場会長と一緒にベイスターズグッズを買うこともできませんでした」
―― ハイセンスジャパンが横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)のスポンサーになって1年が経ちました。李社長が春季キャンプを訪れるのは初めてですよね。
李 文麗さん 沖縄のキャンプはすばらしいですね。ルール、選手、グッズ......。新しいことをたくさん覚えました。
(野球に限らず)いままで特定のチームのファンになった経験はなかったのですが、初めて応援するチームができました。さっきもグッズストアに行ってこれも買いたい、あれも買いたいって。
南場 智子さん そうですね。さまざまな企画商品があります。
李さん カバンもTシャツも買いましたが、これは南場会長が薦めてくださった、かばんです。とても気に入って、さっそく使っています。
南場さん おそろいですね。買ったものを全部このかばんに入れて持って帰っちゃおうと。2人で同じことやっていますね(笑)。
―― 気になった選手は。
李さん 牧さん。さっきの練習試合でも何人か選手のことを教えていただきました。アメリカから来た選手も印象深いです。
南場さん 今日はジャクソンが投球していましたね。
―― ハイセンスはサッカーW杯で公式スポンサーを務めるなど、スポーツマーケティングに力を入れていますが、日本ではなぜベイスターズのスポンサーになったのでしょうか。
李さん ハイセンスはスポーツを応援しており、グローバルではサッカーのスポンサーをすることが多いのですが、日本はスポーツの中で野球が最も盛んなので、プロ野球のスポンサーの機会をずっと探していました。
実は最初にコンタクトを取ったのは別の球団でした。けれどもその後、DeNAさんとご縁があり、とんとん拍子に話が進みました。
南場さん 最初からずっと仲良くさせていただいて、ご縁ですよね。
李さん もし最初にコンタクトしていた球団にすんなり決まっていたら、南場会長とこうして一緒にベイスターズグッズを買うこともできませんでした。
―― 一緒にキャンプを見学されて、2人でどんな話をしたのですか。
南場さん それはもう、いろいろ。まず私は家電のアイディアを聞かれました(笑)。全部自分のプライベートをさらして、こういうのが欲しいという話を。あとは食べ物の話と......。もちろんベイスターズのことも、いままでなかったような企画をしていきたいと相談しました。
―― ベイスターズとしては、どういう会社にスポンサーになってほしいのでしょうか。
南場さん 一緒に盛り上げようっていう気持ちを持っていただけるところですね。李社長とはいろいろな企画を一緒にさせていただき、相談も気軽に乗ってくださるし、球場でもよくお会いするんですよ。何度も一緒に観戦しています。
李さん 試合を観ながら選手のことを教えていただいています。初めて今回沖縄のキャンプに来ましたが、大勢のファンがいらしているのを見て、チームの魅力をあらためて感じました。
李さん ベイスターズだけでなく、横浜の街ももっと好きになりました。ハイセンスジャパンのオフィスは横浜スタジアム近くの川崎市にありますし、地元愛が強くなりました。
「ベイスターズは横浜の街を盛り上げるような存在になりたい」
―― サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグは地域密着を掲げ、地域活性化の取り組みに力を入れている印象が強いです。プロ野球はどうなんでしょうか。
南場さん もちろん、野球も地域のスポーツとしての役割がありますし、ベイスターズは横浜の街を盛り上げるような存在になりたいです。
横浜って大都会ですから、地域のコミュニティ感って都会になるほど少ないじゃないですか。スポーツって応援しているチームが逆転した瞬間に、知らない人でもハイタッチするほど盛り上がるでしょう。地域の連帯感を強化する存在になれると思っています。
李さん 横浜は大都市で、歴史も文化もおいしい食べ物もあるという印象を持っていましたが、ベイスターズのスポンサーになってからは、お子さんを連れたファミリーがスタジアムに集うのを見て、球団と地域のつながりも感じるようになりました。
南場さん いま、いいことをおっしゃった。地域の連帯感だけでなく、家族や恋人と観戦するなど、スポーツって人とのつながりを強くしてくれる最高のコンテンツだと思います。
李さん 試合を観戦して盛り上がってお祝いするとか、その家族の関係も強くなる。もしそのチームや試合がなかったら、家族もゲームをしたりスマホを見たりして、別々の行動になるかもしれません。
南場さん 仕事帰りに同僚と見に行くと、職場の連帯感につながりますし、スポーツってすがすがしいコンテンツなんです。時間をともにして、一緒に悔しがったり楽しんだり。相手チームのファンがそこにいても野球という話題で交流ができる。共通の話題になりますよね。
「南場会長と一緒にアジアで野球のプロモーションをやりたい」
―― ハイセンスは念願だったプロ野球のスポンサーになり、李社長は個人的にもベイスターズのファンになったとのことですが、今後はどうやって盛り上げていきたいですか。
李さん 日中の友好、相互理解に貢献ができればいいなと思っています。
南場さん まず野球というスポーツを、中国にそしてアジアに広げていきたいとも思っていて、もっと中国から試合を見に来ていただいて、日本のことを好きになってほしいと2人で話しています。
――野球を広げるためには道具も必要ですけど、ルールの理解もありますよね。
南場さん そうなんですよ。私たちは野球を見ながら育っているので、自然に理解できていますけれど。私の大学院時代のルームメイトがヨーロッパの人で、彼女に野球のルールを説明しようとしたら、どこから説明していいかわからなくなったんです。反時計回りに走るとか、戻ってきたら1点だとか。けっこう複雑で、説明しようとするとえらい大変なんですよな。見るのが一番ですけど。
李さん そうですね。中国は野球がメジャーなスポーツではないのですが、ルールの複雑さも理由の1つだと思います。南場会長と一緒にアジアで野球のプロモーションをやりたいですね。
―― 昨シーズンベイスターズはリーグ3位でしたが、クライマックスシリーズのファーストステージで敗れてしまったので、李社長は横浜スタジアムでのポストシーズンをまだ経験していません。
南場さん いや本当にそれは、(ペナントレースで3位だったため)クライマックスシリーズを横浜に持って来られなかったから。今年は横浜に間違いなく持ってきますから、そこで一緒に盛り上がりましょう!
3月13日公開の<日本のスポーツ産業、どうしたらもっと盛り上がりますか?【独占対談】横浜DeNAベイスターズ オーナー・南場智子さん×ハイセンスジャパン社長・李文麗さん>に続きます。
【プロフィール】
南場 智子(なんば・ともこ):株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役会長 1986年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。1990年、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得し、1996年、マッキンゼーでパートナー(役員)に就任。1999年に株式会社ディー・エヌ・エーを設立し、現在は代表取締役会長を務める。2015年より横浜DeNAベイスターズオーナー。2019年デライト・ベンチャーズ創業、マネージングパートナー就任。著書に「不格好経営」。
李 文麗(り・ぶんれい):ハイセンスジャパン代表取締役。1972年生まれ、中国・青島出身。1995年、青島大学電子工学科卒業、Hisense国際有限公司入社。 2001年にHisense USA、2003年にHisenseオーストラリア、2007年にHisenseヨーロッパ、2011年にHisense韓国事務所。2011年、ハイセンスジャパン代表取締役社長・CEOに就任。
【筆者プロフィール】
浦上 早苗(うらがみ・さなえ):経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。新聞記者、中国に国費博士留学、中国での大学教員を経て現職。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。