震災の記憶がない世代にも語り継ぐための工夫
伝承館で「語り部」を始めたのは、21年5月。当初は、「請戸小学校物語」の紙芝居を前半15分ほど見せたのち、横山さん自身の経験談を話していた。今は「自分の言葉で」40分ほどを通しで語っている。
11年3月11日14時46分、発災。浪江町では震度6強を記録した。当時小学6年生の横山さんは、教室にいた。「津波が来る」となり、浪江町役場に避難した。だがしばらくの間、両親と会えず心細かった。翌朝、両親と合流できたが、祖父母が津波で流されたつらい現実があった。こうした自身のエピソードを盛り込んでいる。
「災害が起こる前に、家族と『どこに避難するか』を決めておけば、もしかしたら助かったかもしれない。だから、皆さん話し合っておいてくださいねと呼びかけます」
「地震が来たら、安全な場所で身を隠してください」「避難指示が出たら、ちゃんと避難してください」。横山さんが伝えたいメッセージだ。聞いてくれた人たちには、「この2つだけでも、心にとどめて帰って頂けたら」と願う。
聞き手は小学生から大学生までの、20代以下が多い。震災当時は生まれたばかりだった人も。震災の記憶がない世代が増えてきた事実を横山さんは実感する。小学校低学年以下の年齢を相手する場合は、あえて紙芝居を使って、頭でイメージしやすい工夫をする。また横山さんと同世代なら、話を通じて共感を得られやすい。原稿は持たず、相手を見て語り掛ける、時には、
「あなただったら、どうしますか」
と質問。すると、一生懸命考えてくれる様子が伝わってくるという。