スマートフォン料金値下げ競争が一段落した現在、携帯電話大手のサービスの利用者が一番多いのはどこか、また、満足度が高いのはどこだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年3月5日に発表した「2024年MNOのシェア・満足度調査」によると、シェアトップ3の「docomo」「au」「SoftBank」が、総合満足度ではワースト3に並ぶ「真逆の結果」が出た。
いったいどういうことか、調査担当者に聞いた。
「満足度」トップ3は、「LINEMO」「povo」「ahamo」
MMD研究所の調査(2024年2月2日~5日)は、スマホを所有している18歳~69歳の男女4万人を対象に予備調査が行われ、その後、各プランのユーザー(300人ずつ計2700人)に本調査が行われた。
調査対象となったサービスは、携帯電話大手4社の「docomo」(NTTドコモ)、「au」(KDDI)、「SoftBank」(ソフトバンク)、「楽天モバイル」(楽天モバイル)と、サブブランドの「ahamo」(NTTドコモ)、「povo」(KDDI)、「UQ mobile」(同)、「LINEMO」(ソフトバンク)、「Y!mobile」(同)の9つだ。
まず、通信契約しているスマホを所有している3万6643人を対象に、メインで利用している通信サービスを聞いた。結果は、「docomo」(27.9%)、「ahamo」(6.0%)、「au」(15.9%)、「SoftBank」(10.9%)、「Y!mobile」(10.0%)、「UQ mobile」(8.5%)、「楽天モバイル」(7.8%)、「povo」(2.3%)、「LINEMO」(1.2%)、そして「格安スマホ」(MVNO、9.6%)【図表1】。
大手4社の9つのサービスプランを約9割(90.4%)のユーザーを利用しているわけだ。
9つのサービスをメインで利用している3万3128人を母数にして、各サービスのシェア(利用率)を調べると、以下のような結果になった。
1位「docomo」(30.9%)、2位「au」(17.5%)、3位「SoftBank」(12.1%)、4位「Y!mobile」(11.1%)、5位「UQ mobile」(9.4%)、6位「楽天モバイル」(8.6%)、7位「ahamo」(6.6%)、8位「povo」(2.5%)、9位「LINEMO」(1.3%)【図表2】。
ところが、予備調査から9つのサービスを利用している2700人(各300人ずつ)を抽出して「総合満足度」を聞くと、順位が大きく変わった。
「満足度」を、「料金部門」(安さ、プランの分かりやすさ、お得さ)、「サービス部門」(提供端末やオプションプランなどの豊富さ)、「通信品質部門」(データ通信速度、つながりやすさ)、「顧客サポート部門」(情報の豊富さ、サポート対応の良さ)の4部門で聞き、合計ポイント(1000満点)で「総合満足度」をランキングする仕組みだ。
すると、意外な結果に。
満足度1位=シェア9位の「LINEMO」(744点)が、2位=シェア8位の「povo」(740点)が、そして3位=シェア7位の「ahamo」(724点)が入った。
一方、満足度7位=シェア1位の「docomo」(642点)が、同率8位=シェア2位の「au」と3位の「SoftBank」(631点)が入った【図表3】。
つまり、シェア上位3つが、満足度では下位3つにそのまま陥落する逆転劇になったわけだ。これはどういうわけか。
「総合満足度」の決め手は、やっぱり「安さ」
J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者の話を聞いた。
――シェアトップ3の「docomo」「au」「SoftBank」が、総合満足度ではワースト3に。逆にシェアワースト3の「LINEMO」「povo」「ahamo」が満足度ではトップ3にと、見事に逆転しました。2023年9月にMMD研究所が行なった同様の「調査」でも同じ結果が出ましたから、偶然とは思えません。これは、どういうことでしょうか。
担当者 総合満足度の算出方法として、アンケート時に「料金」「サービス」「通信品質」「顧客サポート」の比重を聞いており、それに沿って点数を算出しています。その際、毎回「料金」の比率が一番高く出るのです。料金を評価した場合、「docomo」「au」「SoftBank」は、ほかの6サービスと比べて高いため、いつもワースト3となっています。
参考までに昨年(2023年)9月に調査した料金データを【図表4】にまとめました。これを見ると、「docomo」「au」「SoftBank」の3つのプランの月額平均利用料金は9498円です。一方、「LINEMO」「povo」「ahamo」は5063円~6500円ですから、やはり安さが大きな魅力となり、満足度がかなり高くなります。
――そもそも、商品サービスのシェアと満足度のランキングが一致しないというか、まるっきり逆転する傾向は、食品やアパレル、自動車など、ほかの業界ではでは聞いたことがありません。なぜ、携帯電話業界にだけこういう傾向がみられるのですか。
担当者 シェアの話となると、「docomo」「au」「SoftBank」の3キャリアユーザーはもともとボリュームがあり、それ以外のサービスは2020年9月に菅義偉内閣(当時)がスタートして、携帯電話料金値下げを打ち出してからできたサービスが大半です。
歴史が浅いため、満足度とシェアは相関せず、3キャリアのシェアは引き続き大きい結果となっています。
ただ、シェアの伸び率は新しいユーザーを獲得できていることになるため、満足度と相関しています。また、満足度は高いとブランドを維持し、低いと退会する指数となります。そのため、満足度とシェアの伸びは「不満足」を見るのがよく、満足度の低い3キャリアの本ブランドは減少していることがわかります。
小さいシェア割合だが、頑張ってユーザーの心つかむ
――どういうことですか。詳しく教えてください。
担当者 【図表2】を見てください。約1年半前の2022年9月からのシェアの伸び率を見ると、総合満足度トップ3の「LINEMO」は0.1%増、「povo」は0.1%増、「ahamo」は1.3%増と、小さいシェア割合ながらも頑張ってユーザーの心をつかんで伸びていることがわかります。
一方、シェアではトップ3なのに総合満足度ではワースト3の「docomo」は1.5%減、「au」は2.4%減、「SoftBank」は0.6%減と、少しずつですが、確実にユーザーが離れているのがわかります。
――なるほど。ところで、同じ時期にシェアを伸ばした「UQ mobile」(2.2%増)や「楽天モバイル」(0.3%増)にはどんな魅力があるのでしょうか。
担当者 「UQ mobile」はKDDI=auのサブブランドです。「NTTドコモ」「KDDI」「ソフトバンク」「楽天モバイル」の大枠で見ると、シェアの比率はさほど変わらないため、同じKDDI=au系列の「au」や「povo」を契約していた方が乗り換えた可能性があります。
「楽天モバイル」に関しては新生活が間もなくという時期ですので、安さを求める方が新規契約したり、乗り換えたりした可能性があります。これは、オンライン専用プランやキャリアサブブランド全体にもいえることになります。
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)