マイナンバーカードの氏名や住所、顔写真などの情報を、スマートフォン(スマホ)に搭載できるようにする――。このための法整備を盛り込んだ関連法改正案を、政府は2024年3月5日、閣議決定した。
実際に運用が始まれば、カードが手元になくてもスマホのみで本人確認が可能となる。ただマイナカードはいわば、個人情報の塊。いつも携帯しているスマホを紛失すれば、本人にまつわる多種多様なデータが漏れ出す危険性が心配だ。
ひも付けの誤りが8351件
マイナンバーを巡っては2023年、トラブルが続出した。6月、マイナンバーとひも付けて国からの税の還付金などを受け取る「公金受取口座登録制度」で、本人のマイナンバーに親など別人の口座がひも付けられている例が複数見つかったと、複数の報道が出た。国会で取り上げられる事態に発展したのだ。
さらに同月、医師や歯科医師による団体「全国保険医団体連合会」が、「マイナ保険証」について全国の保険医協会などから上がってきた情報として、別人の情報がひも付けられていたケースが31都府県で114件確認されたと発表。他にも、窓口でマイナ保険証を認証できず、一時的ながら患者に全額負担を求めた例が38都道府県で776件に上ったとした。
河野太郎デジタル担当大臣は、同年12月12日の記者会見で、同日までに本人確認作業が終了している8206万件の中で、ひも付けの誤りが8351件だったと発表した。
個人情報やセキュリティー面で、心配になる出来事だった。マイナンバーカードの場合、利用時以外は自宅で保管すればよい。一方、スマホは日々、持ち歩く。もしもスマホを落としたら――。それだけで自分の情報が漏れ出すわけではないが、不安はぬぐえない。
スマホ保護の基本対策徹底を
J-CASTニュースBizは、情報セキュリティーに詳しいITジャーナリストの酒井麻里子氏に意見を求めた。
「すでに多くの人が、クレジットカードをスマホから使ったり、オンラインバンクの情報にスマホからアクセスしたりしていると思います。いずれもリスクはゼロではないものの、情報を守るために必要な設定を行ったうえで利便性を享受しています。それらと同様に考えるのがわかりやすいかもしれません」
マイナンバーカードの情報がスマホに搭載されるだけなら、何か危険が発生するわけではない。
「スマホのロックをきちんとかけ、他人が勝手に操作できる状態で放置しないことや、マイナンバーとセットで使う暗証番号を他人に知られないように管理すること、紛失時に一時利用停止を行うコールセンターの番号を把握しておく、といった基本的な対策を行えば、過剰に心配する必要はないと思います」
併せて、
「スマホは常に持ち歩いていることを考えると、使用頻度の低い物理カードより利用時の置き忘れ等のリスクは低いかもしれません」
と、実は「スマホ化」した方が紛失しにくいのではないかとも指摘した。
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)