管理職は「罰ゲームか?」といった否定的な論調が多いなか、女性が管理職に就くことは「メリット」が大きいと言う女性研究者がいる。
「おひとり様」の老後を襲う「貧困リスク」の防止になるばかりか、「管理職になると、これまで見えなかった地平が開け、人生のプラスになる」というのだ。
全女性にエールを贈るニッセイ基礎研究所の坊美生子さんの渾身のリポートと、インタビューをお届けする。
ドラマ『逃げ恥』「百合ちゃん」が理想の管理職
<「女性は『管理職』を目指さなければならないのか」 あなたの人生と、「おひとり様」老後の貧困回避のため(1)/ニッセイ基礎研究所の坊美生子さん>の続きです。
――女性が管理職を目指すためには、どんな心構えが大切だと思いますか。
坊美生子さん 『逃げ恥』という大ヒットしたテレビドラマをご存知ですか。2016年にTBSで放送された、『逃げるは恥だが役に立つ』です。「契約結婚」した新垣結衣さんと星野源さん演じる「偽装夫婦」が、本当の恋愛に発展するストーリで、実生活でも2人は本物の夫婦になってしまいました(笑)。
このドラマでは、主演の2人以上に中高年女性から人気を博したのが、脇役で登場する石田ゆり子さん演じる「百合ちゃん」でした。独身のバリキャリで、管理職。仕事はできるが、グイグイと部下を引っ張っていく、昭和の古典的な管理職タイプではありません。
上層部にはいっさい忖度しないかわりに、部下には本音で溶け込んでフラットな関係を築いていきます。自然体でチームをまとめる新しいタイプの管理職なのです。ネットでは「アラフィフ女性の心に刺さる、百合ちゃん名言集」といったサイトまで登場したほどです。
――「百合ちゃん」みたいな管理職を目指そう、ということですか。
坊美生子さん 「百合ちゃん」にヒントがありますが、「百合ちゃん」になれ、というわけではありません。管理職像はいま多様化しており、いろいろなタイプがいます。グイグイ引っ張っていく人もいれば、協調型もある。自分らしい、自分に合ったタイプの管理職になればいいということです。
一般社団法人定年後研究所とニッセイ基礎研究所が昨年(2023年)10月に行ったアンケートで、大企業で働く45歳以上の女性のうち、管理職希望のある456人に「自分が管理職になるとしたら、どのようなタイプを目指すか」と聞きました。
圧倒的に一番人気だったのが「部下の意見をよく聞き、強調して仕事を進める協調型」(約39%)で、「百合ちゃん」タイプに近いです。次に多いのが、「部下をグイグイ引っ張っていくグイグイ型」と「言葉で説得する論理型」と「温厚で、人望でまとめていく人望型」で、いずれも15~17%とほぼ同じでした。
もう、グイグイいくだけが管理職の時代ではありません。自分の性格に合った、自分らしい管理職を自然体でやっていけばよいのです。特別な気構えや気負いは必要ありません。また、管理職の業務が多すぎて「これは部下に任せても問題ない」という仕事がある場合は、権限を部下に委譲すればいいでしょう。
企業に対するインタビュー調査では、管理職昇進と育児の時期が重なった女性は、積極的に「権限移譲」を行って業務量を減らし、管理職の仕事を回していた、という事例も聞きました。