「タイパ」重視の若者も、成長すれば仕事が楽しくなる
――しかし、管理職というと、最近では女性に限らず男性でも「罰ゲーム」というキーワードでネガティブに語られて、若手社員がなりたがらなくなっているのが現実です。
まず、企業が若い層の人材確保のために、賃金を若手に手厚く支給する分、40代~50代の管理職層への支給を減らす傾向があり、若い人から見ると、管理職であることの「コスパ」(コストパフォーマンス)や「タイパ」(タイムパフォーマンス)が低下しています。
さらに、働き方改革で残業が減った分、管理職にしわ寄せがきています。そのうえ、「パワハラ防止」や「コンプラ対応」「ダイバシティ対応」「部下のメンタルヘルス問題」といった現代的な課題が、次々と現場の中間管理職に降りかかっています。
以前よりも管理職の仕事のハードさが増しているのに、あえて働く女性たちに「管理職になるメリットは大きい」と呼びかけても大丈夫なのでしょうか。
坊美生子さん 「管理職=罰ゲーム」といった議論があることは承知しています。しかし、それは過度にネガティブな表現をしているように思えます。職場で働き方改革が進めば、管理職の仕事の在り方も変わってきますし、もう一つ大切なのは、仕事に対する働く人の意識は、さまざまな経験や環境によって、変化するということです。
たとえば、若い人が管理職は「コスパ」や「タイパ」に合わないと思っているとしても、やりがいのあり仕事や、責任の大きな仕事を経験し、5年、10年たって仕事が面白くなれば、彼らの考えも変わっていきます。
もっと上の立場から、部署のパフォーマンスを上げたいとか、新しい事業に挑戦したいと思うようになる人もいるでしょう。「管理職=罰ゲーム」は、新入社員世代の若者の考え方に、焦点を当て過ぎた見方と言えるでしょう。
若者にいろいろな経験をさせて、彼らがもともと持っているやる気といったポジティブな精神をアップさせる方向にもっていくべきです。そうすれば、管理職に対する考えも変わっていくのではないでしょうか
――女性でいえば、どういういうことがいえるでしょうか。
坊美生子さん たとえば、一般職の女性と総合職の女性がいるとします。上司は「一般職の女性は、あまり成長への意欲が強くないから一般職を選んで入社した」と考えがちです。しかし、彼女たちにも責任ある仕事を持たせ、どんどん経験を積ませて、適切に評価すれば、大いに羽ばたいてくれるはずです。人はどんどん変わっていくものです。
私自身も新聞記者時代、3つの地方支局を経験しましたが、最初の支局では新人ということもあって甘えがあり、会社に貢献しようという意識は低かったです。しかし、2つの目の支局でいきなり重要な仕事を任されると、すっかり仕事が面白くなり、責任感も、会社に貢献したいという気持ちも大きくなりました。
若い人が管理職は「コスパ」や「タイパ」に合わないと言っていても、それは今だけの話。成長して仕事が面白くなれば、自身の中で、仕事の価値が上がっていくかもしれません