「井の中の鯨」米国が大暴れしたら...
――この過剰なマネーの一部が日本株に流れ込んでいるわけですか。
熊野英生さん そのとおりです。投資先を求めて、日本株やビットコイン購入に動いています。特に米国では、AI(人工知能)や半導体ブームを反映して、関連企業の株価をものすごい勢いで押し上げています。
半導体大手エヌビディアの時価総額が2月21日の決算報告で、前日比約16%も上昇。時価総額は1.9兆ドル(約285兆円)を超え、1日で約2770億ドル(約42兆円)も増えました。
一企業の時価総額285兆円は、日本政府の2024年度一般会計予算案の総額112兆円の2倍以上ですよ。いかに桁外れのバブル状態かわかるでしょう。米国全体がそうなのです。ドジャースに入った大谷翔平選手の契約が10年総額7億ドル(1014億円)です。日本でそれだけ稼ぐスポーツ選手、いや実業家が何人いますか。
――米国がバブルだとすると、かつてバブル崩壊を経験した日本は気をつけなくてはいけませんね。
熊野英生さん 現在の米国は、「井の中の蛙(かわず)」ならぬ「井の中の鯨」と言えます。一緒に井戸に入っている日本としては、暴れ回る鯨の大波に巻き込まれないようにしなくてはなりません。
――今後のビッグイベントの1つ、3月19日にあるとみられる日本銀行の政策修正はどうなりそうですか。
熊野英生さん すでに内田真一日銀副総裁が講演で、政策金利のマイナスを解除して、マイナス0.1%からプラス0.1%に上げて、しばらく利上げはしないと明言していますから、たいした影響はないでしょう。いったん円高にぶれますが、すぐに円安に戻るでしょう。
――もう1つのビッグイベント、FRBの利下げはどうなりますか。
熊野英生さん FRBの利下げ開始は6月ごろと見られます。ドルがより強くなってドル高、円安に向かうと思われます。日本銀行の利上げ、FRBの利下げと、日米金融当局の真逆の動きになりますが、日銀の0.1%程度の利上げなど、米国の大波に飲み込まれてしまうでしょう。