ゲーム機「プレステーション(PS)5」が好調のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、全社員の8%にあたる約900人を削減する。また、スマホゲームを手掛けるディー・エヌ・エー(DeNA)は、2024年3月期第3四半期決算で、営業損益が276億円の赤字だった。ゲーム事業の不振が響いた。
SIEはコンシューマーゲーム、DeNAはスマホゲームが主戦場で、同じゲームでも違いはある。またSIEの場合、PS5が23年12月に全世界累計実売台数が5000万台を突破と、人員削減するほど不調には思えない。ゲーム産業自体も、衰えている気配はなさそうだ。両社の発表の背景を、ひも解いてみた。
業績や財務に大きな不安は見当たらないが
SIEの人員削減は構造改革が目的だと、2024年2月27日に発表された。サブカル専門ライターの河村鳴紘氏は、次のように解説した。
「ゲームビジネスは、ソフトが売れてこそ大きな利益を手中にできます。現時点でソニーの業績や財務に大きな不安は見当たりませんが、想定より利益が出なかったことに加え、PS5の年間出荷台数も計画より下方修正したことに敏感に反応した形です」
要は、「ソフトがもっと売れてほしかった」というわけだ。ゲームビジネスは6~7年の波があり、ゲーム機が普及すると業績が右肩下がりになる。人員削減は業績面で即効性があるが、挑戦的な試みに取り組みづらくなると指摘する。
一方、DeNAの決算発表。2024年3月期第3四半期、ゲーム事業の売上収益は、前年同期比で17%減の391億円で、セグメント損益では95%減の3億円だった。河村氏は、こう分析した。
「ゲームビジネスは『水もの』の一面はあるものの、同社の『顔』となるようなゲームコンテンツが長らく不在なのが理由ではないでしょうか。原点に立ち返りながら、ライバルにはない『面白いもの』を生み出せないと、厳しい状況はまだ続くのかもしれません」
今後は「大変な戦いが続く」
ゲーム業界は、新型コロナウイルスの感染拡大による恩恵を受けた。在宅時間が増え、自宅での時間を快適に過ごせるよう「巣ごもり需要」が拡大したのだ。しかしその後、業界全体の世界的な市場規模は縮小。ただ「業績的な反動は想定内といえます」と、河村氏は分析する。
日本のゲーム業界は、中長期的には成長を続けると同氏。少子化などの理由で日本市場は縮小する可能性があるが、世界市場全般では拡大していくとみる。例えば、スマホゲームは無料で遊べる点が強く、ユーザーとの接触回数も多い。そのため、スマホゲームは他の娯楽よりも優勢で取って変わられるとは考えづらいという。
また、スマホゲームとコンシューマーゲームは、ゲームコンテンツの映像化に力をいれている。人気ゲームキャラクターの「マリオ」や人気ゲーム「グランツーリスモ」は映画化した。ゲームに対するユーザーの愛着が生まれたり、収益化に繋がったりするとの話だ。
一方、ゲーム業界の各社は「大変な戦いが続く」と予測。スマホとコンシューマーのゲームは、コンテンツを充実させるための開発費が高騰している。また、看板コンテンツの知名度を上げ、コンテンツに対するユーザー接触の拡大にも力を入れなければならない。
河村氏は、「看板作の認知度を拡大して経営的な安定基盤を確保しつつ、その利益を投じてリスクを負いながら新機軸のコンテンツを作り上げていくことが求められています」と話した。