日経平均株価は最高値更新でも景気はイマイチ、給料も上がらない 謎を解き明かす二つのカギ

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多くの大企業は業績が好調も中小は...

   一つは、日経平均株価が日本を代表する大手企業225社の株価の平均を示している点だ。現在、多くの大企業は業績が好調で、社員の給料も上昇傾向にある。

   中でも日経平均を代表する4社、すなわちファーストリテイリング、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループは絶好調。この4社の株価は、本年に入り2月22日までに平均で四割近くも上昇した。日経平均株価は同時期に16.8%の上昇を記録したが、何とその半分近くがこの4銘柄の株価上昇によるものだった。日経平均を先導しているのは実質的にユニクロとハイテクと通信であると言って良い。

   半面、数の上で圧倒的多数を占める中小企業は厳しい状態にある会社が多く、給料もなかなか上がらない。業種や規模による企業間格差がより鮮明になって来た。

   もう一つは、株価は現在の企業の収益性を反映しているわけではなく、(理論的には)企業が将来に生むであろう利益の期待値を示していること。仮に会社のもうけがゼロでも、将来大きく成長していくだろうと多くの投資家が考えれば株価は高くなる。

   実際、日本企業に対する海外投資家の視線は熱い。曰く、停滞する中国に代わって日本が復活する、アベノミクスの第3の矢である成長戦略が実を結びつつある、物価の上昇と賃金の上昇が相乗効果を起こして景気にプラスに作用する、といった見方である。これらの意見は昨年あたりから英米で盛んに喧伝されてきており、筆者はこれが昨今の株高の大きな要因の一つだと見ている。

   今の我が国の実体経済は決して良いとは言えないが、株式市場は投資家の期待が先行して買いが優勢となっている。もしも投資家の読みが当たり、結果として景気も上向いてくれば良いが、経済が今後も長い間改善を見せないようであれば、株式相場も結局はしぼんでいくだろう。我々は市場の熱狂に浮かれることなく、冷静に状況を判断していくことが望まれる。(小田切尚登)


〇筆者プロフィール

おだぎり・なおと 幅広い分野で執筆活動やレクチャー等を行っている。バンク・オブ・アメリカ等大手外資系投資銀行数社で勤務した後独立。クラシック音楽サロン「シンフォニー」代表。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。『欧米沈没』(マイナビ新書)。

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