高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ なぜ万博は儲かり、2億円トイレは「高くない」のか

有望な投資機会を逃すのはもったいない話

   このように便益とコストとの関係で論じるという立場から、今話題の2億円トイレを取り上げよう。

   トイレの便益を考えてみよう。中世パリのように、どこでも糞尿を垂れ流すわけにもいかないので、もしトイレがなければ1時間かけて用を足すしかない。万博の開催期間中の入場者数は2800万人と見込まれているが、これを2000万人としてみよう。トイレを使う人を半分として1000万人、その人の平均時給が2000円とすれば、会場全体のトイレの便益は200億円になる。2億円トイレはその一部だろうが、2億円トイレを100か所、便器5000~6000基作ってもおかしくない。

   もっとも、コスト論だけで見ても、一般的な公衆トイレは便器6基で2000万円が相場なので、今話題の2億円トイレは50~60基、しかもリサイクル使用なので、コストは妥当だ。

   コスト増だけで、有望な投資機会を逃すのはもったいない話だ。デフレ時代が長すぎたのか、まともな投資をすることを忘れたかのようだ。大阪万博は日本にはまだ投資機会があることを思い出し、拡大志向になるきっかけにしたらいい。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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