子どもが自分専用のスマホを持つとき、親は何かと心配なものだが、小学生の「初スマホ」の低年齢化が下げ止まったようだ。
NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年2月22日に発表した「【子ども】スマホ所有開始年齢の低年齢化が下げ止まる10.6歳」で明らかになった。
子どものスマホの世界に何が起こっているのか。そして小学生にスマホを持たせるとき、何が一番大切か、専門家に聞いた。
「初スマホ」の年齢、「10.5歳」でストップ?
モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、関東1都6県の小学生・中学生とその親600人が対象。
まず、小中学生でスマホを持たせている親に、いつから持たせているかを聞くと、平均は「10.5歳」だった【図表1】。2021年調査から3年連続変わらない数字なので、スマホ所有年齢の低年齢化が下げ止まったと言えそうだ。
続いて、小中学生に男女別にスマホ所有の開始年齢を聞くと、男女ともに中学生になるタイミングの「12歳」が最も多かった【図表2】。次に多いのが女子は11歳。これに対し、男子は13歳。女子のほうが早くからスマホを持ち始める傾向を示した。
最後に、関東1都6県の居住エリア別にスマホ所有開始年齢を見ると、北関東(茨城・栃木・群馬)では13歳が最も多かったが、南関東(埼玉・千葉・神奈川)では12歳が最も多かった。また、東京も12歳が最も多かったが、10歳・11歳も2割ぐらいと、他の地域と比べ、スマホを持ち始めるのが一番早くなっている。
小学校のICT教育で、スマホ利用がグンと伸びたが...
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の水野一成さん(子ども・シニア・防災調査担当)に話を聞いた。
――スマホ開始年齢の低年齢化がどんどん進んでいたのに、なぜ2020年から10.5歳前後で下げ止まったのでしょうか。何が子どものスマホの世界であったのでしょうか。
水野一成さん ICT教育によって子どもたちの創造性を高めるために、文部科学省が2019年から始めた「GIGAスクール構想」の影響が大きいと思います。「GIGA」(ギガ)は「Global and Innovation Gateway for All」(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)を意味します。
これは、全国の児童生徒にパソコン端末1人1台と、そのパソコンをインターネット環境につながるようにするための校内LANや無線LANなどの高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するものです。この構想のおかげで、子どものICT利用の状況が大きく進みました。
このため、2020年以前は小学生で所有率が伸びたため、平均年齢が下がりました。ただ、近年はその伸びも落ち着き、上がっているのは小学高学年、つまり平均値付近の子の所有率だけが伸びているため、平均年齢が下がり止まったと考えられます。
――しかし、GIGAスクール構想では、小学1年からICT端末を使う授業を行うとされています。となると、スマホ開始年齢の低年齢化がいったん10.5歳前後で止まったあと、今度は小学低学年へと、再び低年齢化が進む可能性はあるのはないですか。それともここで打ち止めでしょうか。
水野一成さん 推測は難しいですが、学校でICT端末(主にタブレットかパソコン)が利用されるようになり、たしかに小中学生のインターネット利用は活発になりました。
ただ、インターネットに利用している端末を見ると、家庭でのタブレット・パソコンの利用も大きく伸びています。そのため、必ずしもGIGAスクール構想の影響がスマホの所有率に関係があるとは言えないと考えます。
年齢が上がると使い方が変わる ルールの定期的な見直しを
――男子より女子のほうが、低年齢化が進んでいるのはどういう理由からですか。
水野一成さん 所有理由の違いがあると思います。男女とも「緊急時の連絡」に必要のためが最も多いですが、男子は「進級・進学がきっかけ」という理由が多いのですが、女子に多い理由として「友達が持ち始めた」が一番に挙げられるのが特徴です。
また、コミュニケーションに関することについては、子どもだけなく全年代において、女性のほうが男性より感度が高い傾向があります。こうしたことが、女子が早くからスマホを持ちたがる背景にあると考えられます。
――しかし、親は子どもにスマホを初めて持たせる際、何かと心配ですよね。どういった点に気をつけて、どんな対策をとるといいでしょうか。
水野一成さん 私たちの調査では、親が最も不安に感じているのは、長時間利用による健康への悪影響です。また、友達とトラブルになることも大きな不安だと回答しています。
やはり親と子で話し合って、スマホの利用ルールを設けることが大切ではないでしょうか。最初は、閲覧内容のフィルタリング、コンテンツの購入・ダウンロードの制限ができる、ペアレンタルコントロールサービスを利用するのも方法です。
また、最初も肝心ですが、お子さんは年齢が上がると使い方が変わってきますので、ルールの定期的な見直しも必要です。
――なるほど。ほかにアドバイスがありますか。
水野一成さん スマホだけが、必ずしもお子さんが最初に接する、あるいは所有するインターネットと接続している機器とは限りません。学校で提供されるタブレット、家のパソコン......。身の回りにはたくさんの機器があり、情報があふれています。
スマホの使い方、インターネットの使い方をお子さんの成長に合わせて、話し合うことをお勧めします。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)