プロボクシングの世界バンタム級戦線が盛り上がりを見せている。WBA世界バンタム級王者・井上拓真(大橋、28)が2024年2月24日に東京・両国国技館で初防衛戦を行い、王座防衛に成功した。世界2階級制覇の中谷潤人(M・T、26)が同日のセミファイナルのリングでWBC世界バンタム級王座を獲得。バンタム級に2人の日本人選手が君臨している状況の中、今後のバンタム級戦線はどのような展開を見せるのか。J-CASTニュースは、数々の世界戦をプロモートしてきたTMKジムの金平桂一郎会長(58)に話を聞いた。
「中谷は非常に当て勘が良い穴のない総合力の高い選手」
井上は元IBF世界スーパーフライ級王者で9度防衛の実績を持つジェルウィン・アンカハス(フィリピン、32)を9回KOで下し初防衛に成功。中谷はWBC世界バンタム級王者・アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ、28)を6回TKOで破り王座を獲得した。中谷はフライ級、スーパーフライ級に続いて世界3階級制覇を達成し、戦績を27戦全勝(20KO)とした。
井上、中谷の対抗団体のIBFはエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ、31)、WBOはジェイソン・モロニー(オーストラリア、33)がベルトを保持している。ロドリゲス、モロニーともに井上尚弥(大橋、30)と世界タイトル戦で対戦した経験を持ち、いずれもKO負けを喫している。
金平会長は24日に行われた世界タイトル戦の内容を踏まえた上で、「バンタム級の4人のチャンピオンの中で実力的には中谷選手が頭ひとつ抜けている」と評し、次のように続けた。
「井上拓真選手もとても良い勝ち方をしました。相手のアンカハス選手も最後まで頑張った。スーパーフライ級で実績のあるアンカハス選手をボディーでうまく倒しました。非常に良い内容でしたが、さらに上を行っているのが中谷選手。今回、世界3階級目で実際戦ってみないと分からないところがあったが、体格的に劣らずもうひと階級上のスーパーバンタム級でも戦えるくらいの体格をしていました。パンチのタイミングがすごく良い。去年行われたWBOスーパーフライ級の王座決定戦で衝撃的なKO勝利を飾ったが、非常に当て勘が良い穴のない総合力の高い選手です」
「来年は中谷選手との王座統一戦の話が出てくると」
今後のバンタム級戦線は、4人の王者による王座統一戦の方向に向かっていくのではないかと予想。理想は井上、中谷ともに2団体王座を統一してから4団体王座統一戦を行うこととした。スポーツ紙の報道によると、井上は次戦、兄・尚弥が5月6日に東京ドームで予定している試合の前座に出場する見込みで、石田匠(井岡、32)との指名試合になる。
金平会長は「井上拓真選手は激闘の後にあまり時間を置かずに次の防衛戦がある。盛り上がっていけば来年は中谷選手との王座統一戦の話が出てくると思います。お互いに2つのベルトを持って対戦するのが理想的。日本のボクシングが盛り上がるのは良いことですし、井上拓真選手と中谷選手が対戦しない理由は全くないと思います。現状、井上尚弥選手以外のマッチメイクで1番盛り上がるのはこの2人でストーリー性もある」と分析した。
バンタム級には日本の実力者が多数存在し、5月4日にWBOアジアパシフィック・バンタム級王者・西田凌佑(六島、27)が大阪でIBF王者ロドリゲスに挑戦する。西田が王座を獲得すれば、世界バンタム級に3人の日本人王者が君臨する。他にも那須川天心(帝拳、25)や武居由樹(大橋、27)らが世界王座を狙っており、今後の動向が注目される。