「理想の上司」男性1位は内村光良さん、女性は水卜麻美さん――。生命保険会社の明治安が2024年2月21日に発表した、新入社員が選ぶ「理想の上司」総合ランキングの結果だ。
毎年発表されるランキングだが、ここ20年ほどで「理想の上司」の顔ぶれはどんな変化が起きているのだろうか。J-CASTニュースBizでは、2003年以降各年のトップ5を抽出してランク入りの頻度を調べ、ワークスタイル研究家の川上敬太郎氏に意見を聞いた。
所ジョージさん、天海祐希さんがトップ5最多
まず、男性編(図1)。最もトップ5に入っているのは所ジョージさん(10回)となった。続いて、内村光良さんとタモリさん(各8回)、明石家さんまさんと池上彰さん(各5回)が続く。近年に限ると、お笑いコンビ「バナナマン」の設楽統さん(5回)、人気グループ・嵐の櫻井翔さんとフリーアナウンサーの桝太一さん(各3回)がランク入りしている。
野球選手・監督も人気が高い。大リーグで活躍したイチローさん(7回)は、引退後もランキングの常連だ。また、故・星野仙一さん(4回)は2003年に阪神タイガースをリーグ優に、2013年には東北楽天ゴールデンイーグルスを日本一に導いた。元東京ヤクルトスワローズ選手・監督の古田敦也さん(同)は2005~08年、ランキング上位に入っている。
一方、女性編(図2)。トップ5の顔ぶれを見てみると、俳優の天海祐希さんが最多13回で圧倒的な人気だ。同じく宝塚出身の真矢みきさんは8回、黒木瞳さんは6回となった。ほか、アナウンサーの有働由美子さんは7回。近年では、2017~24年に連続1位となった水卜麻美さんが8回となっている。
スポーツ界からは吉田沙保里さんが3回、トップ5入りしている。
「個の確立を助けてくれそうな上司」
川上氏は、2000年代の「理想の男性上司」の顔ぶれを、次のように評した。
「2000年頃は『成功者の背中についていく』という昭和の記憶を残しながら、指導力のある星野仙一さんや北野武さんが上位にいます。そこから古田敦也さんのような『目線を合わせて手を引いてくれるリーダー』に理想がシフトしていることが読み取れます」
そこから、池上彰さんのように「リーダーというよりも、ヒントを与え、導いてくれる人」に新入社員の理想が移った。さらに、現在8年連続トップの内村光良さんのような「やさしさや親しみやすさ、包容力のある上司像」を求めるようになったのだろうと分析した。
女性上司の場合、川上氏は、日本国内だと女性管理職比率(課長級)が13.9%と低い点を指摘。「『女性が上司だったら』というイメージで回答する人が多くならざるを得ない面がある」という。
「具体的な場面を想定して組織を『率いる素養』というよりは、黒木瞳さんや天海祐希さんのような、男性にも負けない強さや頼りがいといった『存在そのもの』が備える力が求められている傾向を感じます」
近年のランキングでは、内村さんや水卜さんのような「やさしさ」や「親近感」を感じる人に上位がシフトしている。川上氏は、新入社員が会社組織の一員として従属する考えから、より個・多様性の尊重に価値観が変わっているとする。そこで「個の確立を助けてくれそうな上司」を選んでいる傾向がみられると述べた。