若手社員の2人に1人が3年以内の退職を考えており、「入社前後のイメージギャップ」が影響している。――リスクモンスターが2024年2月14日に発表した調査結果からは、こんな傾向が読み取れる。
人材獲得競争が激化する中、会社のイメージを高めようと各社さまざまな施策を打ち出している。しかし、入社前と後とのギャップが大きくなりすぎると、早期退職の増加の一因になりかねない。人事としては頭の痛いところではないか。
入社後の裏切りに「こんなはずじゃなかった」
この調査は、新卒入社1~3年目の男女600名を対象としたもの。「3年後は(同じ会社)に勤務し続けていないと思う」と答えた人は回答者全体の45%にのぼり、女性では50%に達した。
勤続意欲は、売上規模の小さな会社ほど低い傾向のようだ。「3年後は勤務し続けていない」と答えた人は、100億円以上の会社では42.7%だが、10億円未満の会社では48.8%となっている。
逆に、入社理由にもなった「入社前の良いイメージ」が入社後に悪化したと答えた人は、会社の売上規模の大きな人ほど割合が高かった。
売上規模10億円未満の会社では22.7%だが、10億円以上100億円未満の会社では30.2%、100億円以上の会社では31.4%にのぼっている。大手企業の方が、入社前後のイメージギャップが大きい傾向にあるのだろうか。
なお、「入社前の良いイメージが入社後に悪化した」と答えた人の中で「3年後は勤務し続けていない」と答えた人は47.6%。「入社前の良いイメージは入社後も変わらない」かつ「3年後は勤務し続けていない」の38.4%を上回っている。
入社理由にもなった良いイメージが入社後に裏切られた場合、「こんなはずじゃなかった」「早く軌道修正したい」という思いにさせてしまうのだろう。
「会社の伝統」で新入社員全員が工場勤務へ
新卒入社2年目に日本のメーカーを辞めた女性Aさんも、入社前後のイメージギャップに驚いたひとりだ。大学では外国語を専攻し、輸入事務の仕事をさせてもらえる会社を探していたという。
思えば、会社説明会に参加したときには、自社の製品がどんなに有名商品に使われているか華々しい紹介が行われた。その後、厳しい選考を突破して入社してみると、雪深い東北地方の工場に半年間研修に行くよう指示されたという。
Aさんが赴いたのは機械が大きな音を立てながら稼働する工場で、作業着で黙々と生産作業に従事する仕事に配属された。
「会社は『どんな華々しい製品も、実際には地味な工場で生産されていることを知ってもらいたい。これは当社の伝統だ』と言っていました。工場見学程度と思っていたのが、実際に作業に従事させられるとは意外すぎてびっくりしました。先輩の中には『もう3年目に入る。約束が違う』と嘆いている人もいて、これはいつになったら希望の仕事に就けるかわからないなと」
結局Aさんは在籍中から第二新卒の就職活動を行い、同業の外資系メーカーに転職した。転職先は製造職と事務職で入社選考から配属までルートがまったく異なり、入社すぐに希望する仕事の研修に入ることができたという。
ただしAさんは社会人3年目になって「最初の会社の説明が悪かったというよりも、私が世間知らずだった」と反省し、就活生に注意を呼びかけたいとしている。
「日本のメーカーの品質が高いのは、会社の体質が古臭いところと表裏一体だったりする面があるのかもしれません。年功序列や会社の伝統を重んずるところ、融通が効かないところは、とても自力で変えられそうにありませんでした。ただ私には、終身雇用を前提に全員下積みから始める日本メーカーより、希望する仕事をすぐに教えてもらえて従事できる外資の方が肌に合ったということです」