コロナ禍で導入する企業が相次いだ「テレワーク」。いまは、制度を整備している会社が半数以下にとどまり、なかにはすでに制度を廃止したり実質的な運用をやめたりする会社も出ている――そんな調査結果が公表された。
これはNTTデータ経営研究所/NTTコム リサーチが2024年2月16日に公開した「働き方改革2023」によるもの。働く人からは「働く場所の柔軟性」を求める声が上がる中、コロナ前に戻そうとする会社が存在することがわかる。
従来あったテレワーク制度、今年廃止する会社も
最新の調査結果によると、自分の勤務先で「テレワーク制度が整備されている」と答えた人は46.0%、「整備されていない」が42.0%となっている。
気になるのが、過去にはテレワーク制度があったが廃止された会社があることだ。「2022年以前に廃止されている」が1.3%、「今年(2023年)に廃止された」が4.1%で、制度の見直しを行った会社があることがわかる。
テレワーク制度が整備されている会社でも「実施していない」が29.0%を占め、制度が空洞化している会社もあることがうかがえる。一方「週4日以上」と答えた人は、前年調査の22.9%から5ポイント近く減少の18.2%にとどまっている。
国交省が2023年3月に発表した「テレワーク人口実態調査結果」では、雇用型就業者のテレワーカーの割合は26.1%にとどまったが、雇用型テレワーカーでテレワークの継続意向のある人の割合は86.9%と非常に高い水準だった。
テレワークを続けたい社員の希望と会社の方針が食い違う職場が少なからずありそうな結果だが、「テレワークをやめたからといって、必ずしも悪い会社とは言えない」。そう指摘するのは、都内の人材関連企業に勤め、会社組織に詳しい男性Aさんだ。
「就職先や転職先を選ぶときに、テレワーク制度の有無を確認することがあると思いますが、もし『当社にはテレワーク制度がない』と言われたときに、その理由を確認してみることをおすすめします。納得する答えが返ってくるかどうかで、いい会社かどうかを見分けることができると思います」
「重要なプロジェクトのメンバーだけ出社」は合理的
Aさんによると、基本的にテレワークのメリットを理解していて、業務や部署によって使い分けている会社は、合理的な策がとれる「よい会社である」可能性があるという。
「たとえば『システム開発の仕事は基本的にテレワークでできるし、出社しないメリットもある。だけど、会社にとって特に重要なプロジェクトに携わるメンバーだけは、細かなコミュニケーションが必要なので、週3日は出社日としている』といったように、出社が必要な合理的な理由を説明できる会社は信用できると思います」
出社を必要とする理由として納得度が高い理由に「オンボーディング」――つまり、新人が職場に慣れるサポートをするため、というものがある。
「新卒採用や経験者採用で新たに入社してくる人は、いきなりテレワークではなく、まずは職場の雰囲気に慣れ、業務に必要な研修を受けて、いざというときに気軽に頼れる人間関係を構築するために、何か月かの間は週3日出社してもらっている、といった理由は納得性が高いですよね。従業員のことをよく考える、いい会社だと思います」
また、テレワークを導入しているが、社員が孤独感を募らすなど特有の問題や課題を解決するために「定期的に出社日を設けている」といった対策を講じている会社も、信頼できるという。
逆に危ない会社は「出社の合理的な説明ができない、するつもりのない会社」だ。
「どんな会社にもテレワークで済む仕事があるはずなのに、『誰かテレワークにすると不公平になるから』『管理が面倒になるから』『うちの会社はそういう伝統』といった理由で全員出社させる会社は、無駄なこととわかっていても簡単に変えられない、環境に適応できない古い会社であるおそれが高いです」
また、「せっかく会社があるんだから、みんなで出社して顔を合わせた方がいいだろ」といった、従来のやり方を疑わず新しい手法を積極的に活用したがらないトップがいる会社も、年功序列・終身雇用で仕事はのんびりしているかもしれないが、いつまで経っても給料が上がらない会社の可能性があるという。