三密を避けながら、気楽に活動できる――。コロナ禍の時期は、一人旅への注目度が高まった。リクルートの調査研究機関「じゃらんリサーチセンター」の調査で、「旅の形態」を聞いた質問に「一人旅」と答えた割合は、2021年度に20.1%と過去最高値だった。
「コロナ後」となった今、一人旅はどうなるのか。同センター主席研究員・森戸香奈子氏の見解は「より一般化していく」というもの。シニア層にも広がっていく可能性があるようだ。
気楽にフラっといける魅力
前出のじゃらんリサーチセンターによる調査は、宿泊を伴う国内旅行実態を調べたものだ。最新となる2022年度は、全国1万5572人の宿泊旅行者を対象にした。一人旅を選んだ割合は、22年度が19.8%、21年度は20.1%。一方、18年度は18.0%だった。
森戸氏は、複数人で旅行しづらいコロナ禍で一人旅を始めた人は多かったかもしれないが、ここ数年で需要が急激に高まったわけではないと説明。「10年以上かけて伸びてきたスタイルです」と言う。
北海道在住の男性(40代)は、2013年ごろから一人旅を好むようになったと取材に話す。東京発で大阪まで旅行したり、フェリーに車を乗せて新潟から北海道帯広までキャンプに行ったりした。
「学生や新卒のころは友人とも日程が合わせやすかったので、グループで旅行していました。就職して数年すると、気楽にフラっといける一人旅にハマるようになりました」
友人と合わせるには難しい日程でも、一人なら迷惑をかけずに自由に決められるところが魅力だという。電車を途中下車して知らない土地に歩く楽しさもある。「ただ、待ち時間は話し相手がいないので、少し寂しいです」とも語った。
子育て終わり自分へのご褒美に
森戸氏によれば、一人旅の需要は04年度に比べて約2倍伸びた。背景には、シングル層の増加と個人の嗜好性の多様化があると指摘。また、誰かに合わせるのではなく自分好みの旅行がしたいという需要も高まっている。宿も多様なプランを用意し、一人旅がしやすくなった側面もある。
若年層やシングル層だけでなく、シニア層にも広がっていく可能性もあると森戸氏。「子育てが完了した世代において、自分へのご褒美的な旅や、昔旅した場所を訪れるといった一人旅が増えるのではないかと思います」。